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これまでの活動

ステークホルダー会合2022年度開催
「次世代の方々とのフォローアップ会合」報告記事


 国立環境研究所(国環研)は、当研究所の活動にかかわっておられたり、関心を持ってくださる方々と意見交換をするステークホルダー会合を開催してきました。

 昨年度は、環境問題などに対してアクションを起こしている次世代の方々と、望む社会像や活動を進める上での課題などについてディスカッションを行い、あわせて国環研に対する要望をお聞きしました。(※注)

 2022年度は、昨年度にいただいた国環研への要望に対する受け止めについて当オフィスから報告し、あわせて参考にしていただけそうな知見を研究者から知見提供する「次世代の方々とのフォローアップ会合」を行いました。

 お招きしたのは、前回ご参加いただいた12名の方々です。(敬称略、所属等は2023年3月当時)

入江 遥斗 一般社団法人アクトポート代表理事、横浜国立大学都市科学部3年
楜澤 哲 NPO法人IHRP理事長、イェール大学2年
酒井 功雄 Fridays For Future Tokyo/Japan オーガナイザー、アーラム大学3年
坂本 亮 学生団体「やさしいせいふく」運営委員、国際基督教大学1年
佐座 槙苗 一般社団法人SWiTCH 代表理事、University College London 大学院修士課程
新里 早映 東京農工大学大学院博士課程
新荘 直明 小布施町SDGs観光コーディネーター
須藤 あまね 環境パートナーシップオフィス次世代運営委員、聖心女子大学4年
田中 迅 国際学生会議所九州支部、九州大学4年
中村 涼夏 record 1.5 共同代表、鹿児島大学3年
能條 桃子 一般社団法人NO YOUTH NO JAPAN代表理事
原 有穂 Fridays For Future Yokosukaオーガナイザー、山手学院高等学校3年

 国環研からは知見提供者として、対話オフィスメンバーで東京都市大学准教授の森朋子のほか、将来世代に関する研究を進める資源循環領域室長の田崎智宏が参加し、対話オフィス代表の江守正多が進行をつとめました。

 会合全体のコーディネートは、次世代当事者でもある対話オフィスの宮﨑紗矢香が担当しました。

 本記事では、当日の様子を進行に沿ってご紹介します。

※注 2021年度開催のステークホルダー会合「次世代の方々と、これからの望ましい社会を考える」は、こちら


オンラインで実施した会合の様子。デスクトップ画面をキャプチャーした写真

オンライン会合の様子


前回の対話会合でいただいたご意見への受け止め


 前会合では、下記の3つの議題についてお聞きしました。

1.これからの社会がどうなることを望んでいますか。ご自身の活動はそれとどう関係していますか。

2.自分たちの活動を進めていく上での課題は何ですか。その課題にどう向き合っていますか。

3.望ましい社会の実現に向けて、国立環境研究所や環境研究者に望むことはありますか。

 このうち、3の「国環研に望むこと」については、

・若者の活動や提言へのサポート
・環境問題に取り組む人のメンタルケアや対話の機会
・人文社会的な研究 具体例)公正な移行、ジャストトランジション
・アンチや懐疑論に対抗できるリソースのセット
・別のクラスターにも引っかかるようなメディアへの露出

などの要望が寄せられていました。

 これらの要望に対し、江守さんからは受け止めとして、

「環境問題がひっ迫する一方で社会が動かない現実は、大人でもフラストレーションを抱えている。国環研が専門的に若者のメンタルケアをすることは難しいが、専門的な知見を提供したり、話し合う機会は今後も継続的につくっていきたい」

「メディア露出は研究者の向き不向きもあるため難しいが、インフルエンサーや教員などとつながり、彼らに知見を提供することで発信規模を拡大していくということは考えられる」

といったコメントがありました。

 また、「人文社会的な研究」については、将来世代に関する研究を進める田崎さんより、

「人文社会的な研究の必要性は感じており、3年前から研究を開始している。将来世代を考える仕組みについて、倫理的、また制度的な観点から、意識調査や持続可能性の指標開発などを行い、世代間の意見の違いを尊重しつつ意思決定するための方法を検討している」

とのコメントがありました。


研究者からの知見提供


 続いて2の「活動する上での課題」では、多くの人の関心や共感を得るための情報の伝え方など、活動を広げたり持続させていくことの難しさに言及する声をいただいており、これに関連して環境教育の専門家である森さんが「トランジション理論と人づくり」をテーマに、知見提供を行いました。

 内容を一部、ご紹介します。

トランジション理論と人づくり

 気候変動をはじめとする環境問題は、社会システムの中に「埋め込まれている」問題だと言われています。個人の行動だけでは変えられない規模で環境負荷が発生する中、社会の仕組みやルールそのものを変えていくこと(トランジション)が必要です。

 世の中の大きな変化の過程を見ていくと、システム変革には大きく3つのレベルがあり(図1参照)、我々人間が直接影響を及ぼすことができない外的環境である「マクロレベル」を除いて、法政策などのルールを変える、それを支える人々の意識を変えるなどの「メゾレベル」が変わると世の中が変わったと認識されるようです。

 より計画的に社会変革を起こすには、さらに「ミクロレベル」での取り組みの積み重ねが必要になります。そこで鍵となるのが、多くの人を巻き込んで広い範囲で取り組みを実践することです。

森さんのスライドから

図1

 たとえば、従来の環境教育では「こまめに電気を消す」「家でごみの分別をする」など(図2の第三・第四象限)、個人でできる対症療法的な取組みが奨励されやすい傾向にありますが、「政府や企業に働きかける団体をつくる」「集団での意見表明を行う」など(図2の第一・第二象限)、他者と協働して社会に働きかける集団での行動、いわゆる”シビック・アクション”をどれだけ促進できるかが重要だと思います。

森さんのスライドから

図2


 一方、日本ではシビック・アクションを阻害する要因も存在しているのが現状です。

 「そもそも個人でできることしか思いつかない」「私がやらなくても他の誰かがやるだろう」「周りがやっていないのに、自分だけやったら悪目立ちするのでは」などの声が多く、「どうせ何も変わらない、私が参加しても意味ない」という声に関しては、若い人に限らず、全世代において共通している傾向があります。

 それとは対照的に、積極的にアクションを起こしている人は、社会・環境問題への関心や日本社会への違和感を潜在的にもっており、学内外のプログラムに参加することでよりその関心が引き出され、実践に至っているようです。

 同じ関心を持つ仲間がいるコミュニティを獲得することも、アクションの継続につながっています。


 以上を踏まえ、最後に森さんは次のように投げかけました。

●参加・協力してくれる人を、できるだけ多く巻き込むことが大事。
●環境問題が一番の関心事ではない人でも参加・協力できる場をできるだけ多く創るといい。
●活動に否定的な人に出会うかもしれないが、応援したいと秘かに思っている人も多いことを忘れないでほしい。


意見交換


 会合の最後には、参加者のみなさんと自由に意見交換を行い、森さんの知見提供の話を含め率直な感想やご意見があがりました。

 いただいたコメントを紹介します。

・国連においてもユースの団体があるが、国の垣根を越えて様々なセクターと連携することが大事だと改めて感じた。

・積極的にアクションをしている人は社会への関心を持つ機会が多いという話があったが、社会への関心はどのように生まれてくるのか気になった。日本は公共性という概念への理解が欧米諸国よりも進んでいない現状があると思う。

日本の教育上の課題は、若者に国際感覚がないこと。地域の中で話し合いが完結してしまう。自分と世界のつながりを見える化し、日本にとどまらない範囲にインパクトを与えることができると視野が広がる。また、指導者が内容を知らないため、先生側の教育が不足している。トランジションの話以前に、先生側の教えるリテラシーを向上させていく必要がある。

・デモやスタンディングをして感じていたことを、知見提供の映像やグラフで見せてもらい癒しになった。自分が声をあげるようになったのも授業で見たビデオや本など教育がきっかけであることが多いため、教育のポテンシャルはあると感じた。

日本に限らず教育の課題として感じることは、答えのある学びが多いこと。答えがある教育は考える力がなくなる。

・先生も忙しく、トップダウンの対応に振り回されている。先生が自由に使えて、本質的な社会課題の解決策を実装できるツールキットなどを国立環境研究所や自分の団体で提供できるといい。

・高校生は学業優先のため、活動をしていても将来に結び付くのかわからないという感覚がある。地方に行けば行くほど自分たちのような存在は非現実的なものでしかない。田舎に行くと、周りにロールモデルとなる若者がいない。社会に貢献できる部分を見せていく必要。

・自分の母校は、学校存続のために総合的な学習の時間の先行研究校になっていたが、先生の負担が大きかった。教育に携わる人の持続可能性も考慮すべき。

社会での議論は技術論的だが、技術だけ変えてそれ以外の社会構造は同じままでいいのか?今の未来の描き方ではない形で、未来を描くことが大事ではないか。たとえば、微生物や気候変動のSFを取り上げるなど、正解とされていることすら疑うことも考えたい。

・全年齢で自己効力感が低いという話があったが、学校に限らず社会の中で、異年齢で課題解決をしていく場を作っていけるといい。自分はローカルで活動しているため、グローバルな視座をもって、引き続きアクションしていきたい。

・若者が社会のセクターとどう連携していくかを考えると、「参画のはしご」が大事。お飾り的に使われたり、一緒にやっている感みたいな設計にならないようにしていくこと。そのためには、ユース団体の厚さが必要。

教育というより、人が育つ環境や状況をどう作れるか。アクションというより、カルチャーをどう作るか。たとえばごみゼロや高校魅力化している地域では、はじめは一部の人から始まったものが、時間が経つと地域にとって当たり前のカルチャーになっている。ビジョンで目指さなくてもバリューとして育っていくカルチャーができていく仕組みが作れたら、無理がなくていい。

 コメントでは、全般的に教育に関するご意見が多いのが印象的でした。また、それに付随するものとして世論やメディアに関するご意見も聞かれました。

 参加者のみなさんの発言を受けて、最後に森さん、田崎さんからコメントがありました。

・1990年に環境教育学会ができたこともあり、2000年以降に生まれた人は学校で環境の話を聞いたことがない人はいないくらい、知識の面では普及が進んでいる。かつてないほど環境問題に関心を持つ若者が多いというのは日本の環境教育の成果である。一方で、知識は増えたが、どうすればいいかの教育はされていないため、不安になって終わることが多い個人でできることを頑張るという着地点に終わりがちであるため、目に見えた効果が出てこないのだと思う。

・トランジションの最近の研究では、「マルチプルシステムトランジション」という話がある。気候変動を解決するには、教育、政治などあらゆるシステムを変える必要がある。楽な順番でドミノ倒しのようにやるのか?あえて違うアプローチで回り道をするのか?複数のシステムを考えてトランジションしていかないと、ブレイクスルーできないということだろう。みなさんの活動も、そのようなアプローチで広げていけると変化を起こしやすいのではないかと感じた。


会合を終えて


 今回いただいたご意見を、今後の国環研の研究活動や、対話オフィスの活動にどう生かしていけるかが課題になります。

 対話オフィスとしては、社会に対してより広く情報を届けるための工夫や、地域で活動する方や教育に携わる方など、さまざまな人がフラットに話せる対話の場づくりなどについて具体的に検討し、活動に反映させていきたいと思います。

 フォローアップ会合にご参加いただいた次世代のみなさん、この度はありがとうございました。(終)


[掲載日:2023年6月9日]
構成、文・宮﨑 紗矢香(対話オフィス)

参考関連リンク

●国立環境研究所「書籍『サステナビリティ・トランジションと人づくり』出版記念ウェビナー」(動画/外部リンク)
https://youtu.be/Ll9Fo8a7TRo

●書籍「サステナビリティ・トランジションと人づくり 人と社会の連環がもたらす持続可能な社会」(外部リンク)
https://honto.jp/netstore/pd-book_31545449.html

●対話オフィス「【連載】ミヤザキが行く!研究者に“突撃”インタビュー」
・Vol.01:江守正多さん(地球温暖化の専門家)
https://taiwa.nies.go.jp/colum/miyazakigaiku_01.html
・Vol.02:田崎智宏さん(資源循環・廃棄物管理の専門家)
https://taiwa.nies.go.jp/colum/miyazakigaiku_02.html
・Vol.03:森朋子さん(環境教育・廃棄物工学の専門家)
https://taiwa.nies.go.jp/colum/miyazakigaiku_03.html

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