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これまでの活動

座談会「本音で『ごみ』トーク!“ごみの未来”は私たち次第?」を開催しました

はじめに


 当研究所が毎年夏に行っている大型イベント『夏の大公開』(7/16開催)で、社会対話・協働推進オフィス(以下、対話オフィス)は、座談会「本音で『ごみ』トーク!“ごみの未来”は私たち次第?」を開催しました。

登壇者が並んで座っている写真

当日の座談会の様子。登壇者はつくばの研究所に集まり、YouTubeのライブ配信で実施しました。(画像は当日の配信動画より)

 私たちの日々の暮らしからは、たくさんのモノが“ごみ”として捨てられています。その背景にあるのは、「大量生産、大量消費」という今の社会のありかた。

 問題の解決には、私たち消費者、モノを生産する企業、ごみを集めて処理する自治体など、社会を構成するさまざまな立場の人たちが一緒に考え、取り組むことが大切です。

「ごみを出さない、出しても無駄にせず資源として循環する、そんな社会を実現するには?」

 当日は、芸人活動の傍ら、清掃員として日々ごみと向き合うお笑いコンビ「マシンガンズ」の滝沢秀一さん、2003年に自治体としてはじめて「ゼロ・ウェイスト宣言」を行った徳島県上勝町ゼロ・ウェイストセンターの大塚桃奈さん、フリマアプリ「メルカリ」を運営し、資源が循環する社会へとアプローチする株式会社メルカリの山下真智子さん、そして、ごみ・資源問題を社会システムの観点から研究する当研究所の田崎智宏さんの4名を登壇者に迎え、 “ごみ問題のない未来”のためにどうしたらいいか、多様な視点から考えました。

 進行は、対話オフィスの江守正多さんがつとめ、前半は登壇者による話題提供、後半はライブ配信中に視聴者からいただいたコメントも交えたディスカッションを行いました。

 当日の様子をご紹介します。


話題提供①<ごみ収集の現場から>


 最初に、ごみ清掃員として東京都内で日々出されるごみを回収している滝沢さんが、「ごみは出したら終わりだと思っていない?」をテーマに、簡単に捨てられ廃棄されるごみの問題点を現場の写真とともに紹介しました。

 日本では自治体により分別のルールが決まっており、それに準じて私たちはごみを捨てるのですが、「このぐらいいいかな?」というちょっとした気持ちでルールを破ることが、大きな問題につながることも。

 例えば、スプレー缶やリチウムイオン電池が可燃ごみにまぎれて捨てられることで、ごみ処理施設や清掃車の火災が発生したり、無造作に捨てられたペットボトルは風などで流され、最終的に海にたどり着くことで海洋プラスチック問題へとつながります。

 では、分別してきちんと捨てさえすればそれで良いのでしょうか。

 大量に捨てられたごみは、リサイクルするにしろ焼却処分をするにしろ、処理には膨大なエネルギーを必要とし、資源を大量に消費している点からも必ずしも環境にいいとは言えません。

 滝沢さんはこうした現状から、「ごみ出しのルールのみならず、今の社会構造でいいのだろうか?」という問題点を挙げました。消費者や企業はどうあるべきで、そして“だれのため”のごみ問題なのか、私たちに問いかけました。

1人目の登壇者、滝沢さんが話している写真

お笑いコンビ、マシンガンズの滝沢さん。捨てられた“あと”のごみについて、清掃員としての実体験とともに話しました。


話題提供②<ごみ問題に取り組む自治体として>


 次に、自治体と一緒にごみ問題に向き合う上勝町ゼロ・ウェイストセンターの大塚さんが、上勝町のこれまでの取り組みや、今後の課題について話しました。

 徳島県にある“四国一小さな町”といわれる上勝町では、2003年の「ゼロ・ウェイスト宣言」から、ごみを出さない社会を目指した取り組みを町全体で進めています。

 有名な対策のひとつが、13種類45分別の細かいごみ分別。「燃えるか、燃えないか」ではなく、「資源として再生できるか、できないか」といった独自の基準で回収しています。

 とはいえ、細かな分別には大きな手間がかかるため、町民の半分以上が高齢者となる上勝町では取り組みが負担になる難しさも。

 大塚さんは、「ごみを出さない努力が、今の社会では個人にすごく依存している。上勝では45分別を続けたい訳でも、他自治体に広げたいわけでもない。資源循環の選択肢が当たり前にあり、楽しく取り組める社会が必要」と話し、ごみを減らすために社会システムはどうあるべきか、疑問を投げかけます。

 また、モノを作る企業、使う消費者、処分する自治体など、取り扱う主体によってごみの価値は変わり、それにより“ごみの行き先”も変わるとし、さまざまな立場の人が一緒に考えることの大切さを伝えました。

 上勝町ではゴミステーションと併設して、県外の人が取り組みを体験できる宿泊施設も運営しており、情報を共有するとともに他の団体と連携した活動にも力を入れています。

2人目の登壇者、大塚さんが話している写真

上勝町で、ゴミステーションや宿泊施設を有する複合施設「WHY」を運営する大塚さん。地域ならではの取り組みを紹介してくれました。


話題提供③<資源循環を目指す企業の立場から>


 次の話題提供は、中古品売買のフリマアプリで有名なメルカリの山下真智子さんです。

 2013年に運営が開始され、今では毎月約2千万人が利用し、これまでの出品数は累計25億品にのぼるなど、気軽に利用できるサービスとして人気のメルカリですが、このフリマアプリが誕生した背景には、「限られた資源が大切に使われ、循環する社会へ」という創業者の思いが。

 資源は限られているのに、このまま「使っては捨てる」の暮らしを続けていていいのか?という疑問から、スマートフォンなどテクノロジーを活用し、個人と個人をつなぐことで資源を流通・循環させようと考えました。

 メルカリが提案するのは、不要になったモノを「捨てる」のではなく、メルカリで「売る」という“選択肢”です。モノに新たな“価値”を生み出すことで、限られた資源をみんなで共有して大切に使う社会の実現を目指しています。

 新しく始めた「メルカリエコボックス」も、ごみを減らすためのアプローチのひとつ。

 「もう使わなくなったけど捨てられないもの」を一時的にボックスに保管しておくことで、簡単に捨てるという選択肢をなくし、人にあげたり中古品として売ったり、リユースがもっと身近で当たり前になるような仕組みを提案しています。

3人目の登壇者、山下さんが話している写真

メルカリの山下さん(右)は、社会システムにどうアプローチできるか、この問題に事業として取り組む視点から解説。


話題提供④<資源循環・廃棄物管理の研究から>


 最後に、当研究所の田崎さんが研究者の立場から、ごみ・資源問題について解説しました。

 ごみの対策のひとつに、3R(リデュース、リユース、リサイクル)があります。特に日本ではこれまで、リサイクルや、ごみの焼却などによる熱・エネルギーの回収に力を入れてきましたが、ここ最近はリデュース(ごみを出さない)やリユースを改めて重視していこうとする傾向があるそう。

 例えば、2022年に施行されたプラスチック資源循環促進法では、捨てるときのことを考慮した対策が主軸になっていたり、メルカリのようなフリマアプリの普及(リユース)や、部品を交換して直しながら使う(リペア)など、ごみをごみにしないための“選択”が社会に浸透しつつあると紹介。

 モノの価値といった視点から考えた場合も、素材ベースに戻してリサイクルするよりも、リユースや一部を修理して使うことで、モノそのものの価値をあまり変えずに資源循環する方がいいのでは?と、対策をステップアップさせていく重要性を話しました。

 こうした取り組みを進めるには、モノを作るときから、使用→廃棄→再生産といったモノのライフサイクルを考慮する必要があります。そのためには、各工程で主体となる人との連携・協働が欠かせず、取り組みが無理なくできるような仕組みを作ることが大切です。

 よりよい社会システムの構築に向けてどう取り組んでいくかのポイントを整理し、ごみの未来は“どれを重視するか”によって変わっていく、と解説しました。

4人目の登壇者、田崎さんが話している写真

当研究所の田崎室長。ごみ・資源問題における日本の対策を紹介しつつ、スマートに楽しく、前向きに取り組める仕組み作りが重要、とディスカッションへつなげました。


ディスカッション「世の中の仕組みをどう変えたらいい?」


 登壇者それぞれの視点から情報や問題点を共有したあと、後半は視聴者からのコメントも交えてディスカッションを行いました。

 話題提供のなかでも挙げられた「社会のシステムはどうあるべき?」を大きなテーマに、2つのポイントから議論しました。

ディスカッションのテーマを書き出したスライド

テーマ①出たごみを資源として循環させ、活かしきることができるか?

 ごみを「活かす」という視点から、山下さんはメルカリで実際にあったユニークな出品について紹介しました。

 売り出されていたのは、なんと「玉ねぎの皮100g」。購入された方は染色の材料として活用されたそう。通常であればごみとして捨てられてしまうものが、他の誰かにとっては必要なものかもしれないという考え方が、ごみを減らす行動につながると話しました。

 またメルカリでは、商品のやりとりで欠かせない梱包資材の削減にも取り組んでいます。繰り返し使える「メルカリエコパック」を開発し、梱包材もリユースするのが当たり前になるよう企業として取り組んでいます。


 視聴者からは、「台湾には衣装回収ボックスが街中に置いてある」といった洋服のリユースについてのコメントも。

 集められた服の多くは発展途上国に寄附されていますが、寄せられる現地では服があふれていて捨てられているという話もあり、滝沢さんは回収された“先”が見えにくいという問題点と、できあがった服を資源として循環させる難しさを指摘しました。


 社会システムを変えるという視点では、視聴者から「大人を変えるのは難しい。義務教育に取り込み、子どもから親世代に伝える方法も」というコメントをいただきました。

 大塚さんは、上勝町では住民が自分たちでごみを持ち寄り捨てているため、子どもたちは幼い頃から分別する意味や、ごみの行先を自然と学べる環境かもしれないと話し、地元の小学生のアイデアから誕生したという、不要なものを無料で持ち込み・持ち帰れる上勝独自のリサイクルショップについても紹介しました

くるくるショップの写真

ゴミステーションに併設されている「くるくるショップ」。持ち込まれたモノには値段がなく、必要な人は自由に持ち帰ることができ、毎月300㎏~500㎏のモノが循環している(町外の方も持ち帰りのみOK)

 オンラインで誰もがアクセスできるプラットフォームを展開するメルカリ、町で決めたビジョンに住民全体で取り組む上勝町。

 アプローチの仕方は違えど、どちらも「人々が気軽に参加できる場所」を提供することで、社会が無理なくごみ問題に向き合える仕組みを提案しています。


 また、リサイクルの話になるとよく話題になる、レジ袋とペットボトルについても視聴者からコメントがありました。

 レジ袋の有料化にともない一気に流通が増えたエコバッグですが、必要以上に大量に作られたり、数回しか使っていないのに捨ててしまう場合には、かえって環境負荷になるとの指摘も。

 滝沢さんは清掃員の立場から、エコバッグが大量に捨てられていたという実例も挙げつつ、でも気軽に捨てられていたレジ袋の量は明らかに減ったと話し、無料と有料の差は大きいと話しました。

 ペットボトルについては、現在9割以上が回収されているけど、海洋ごみ問題を考えた場合にはこれでも十分ではないと田崎さん。

 プラスチックは環境のなかで分解されないため、一回出てしまったら自然になくなることはありません。99.9%回収するぐらいの対策が必要で、企業、社会ともに協力した取組みが求められていると、その重要性を解説しました。


テーマ②そもそもごみを出さないようになるか?

 次に、ごみを出さないためにはどうしたらいいかについて、話し合いました。

 江守さんは、ひとつ前の話題で挙がったレジ袋を例に、「有料化」はひとつの手段では?と提案。田崎さんも、お金を出すということは、本当に必要かどうか判断する機会を作ることになり、必要以上にもらわない=廃棄されるごみの量を減らすことにつながると話します。


 また滝沢さんからは、モノを生産する側(企業など)の責任について言及がありました。

 生産元の企業が一定のものを最終的に回収するような仕組みが大切で、作りっぱなしにするのではなく廃棄されるところまで考えることで、リサイクルしやすかったり、修理がしやすいモノ作りをするようになるのでは、と提案しました。

 この考え方を「拡大生産者責任」といいます。モノの生産、使用までの段階ではなく、廃棄、リサイクルの段階まで生産者が責任を負うという考え方で、欧州ではこれを取り入れた対策が進んでいるそう。

 これについて田崎さんは、生産者が関わることや廃棄することまでを考えた製品設計はとても大切で、日本でもある程度は進んでいるが、一方で、生産者だけに全てを任せるような体制には限界もあると話します。

 モノを作って廃棄するというプロセスでは、生産者、流通業者、収集業者、リサイクル業者、資源化のための技術開発者などさまざまな関わりがあり、他の人たちも協力しないと結局は高コストな仕組みになってしまうと指摘。

 そこにはもちろん、私たち消費者の協力も欠かせません。不法投棄などは処理費用を払うのが嫌で起こる問題なので、処理にかかるコストをあらかじめ商品価格に組み込むことができればと滝沢さんは話しますが、議論はずっとされているものの、残念ながら実現にはなかなか至っていないと田崎さんが答えました。

江守さんと滝沢さんが並んで写っている写真

進行をつとめた対話オフィスの江守さん(左)。滝沢さん(右)は軽快なトークで、座談会を盛り上げてくれました。


 消費者がどこまで協力できるか?という点からは、分別のための包装がはがしにくかったり、とても手間がかかるような製品は、特に年配の方など消費者側の負担が大きいという意見も。

 メーカーによっては、その辺りまできちんとモニタリングして対策しようとしているところもあるそうですが、そういう情報を独占するのではなく、企業同士でシェアできるような流れがもっとできるといい、と大塚さんは提案しました。

 そしてメルカリでは、まさにそうした他の企業と連携した取組みの検討を現在進めているそう。

 山下さんは、過剰生産が大量廃棄につながるため、ごみを出さないようにするにはそこを見直す必要があると話し、例えば一次流通の企業とメルカリのデータをうまく共有することで、適切な量が作られるようにならないか目指していると解説しました。


さいごに


 ディスカッションの最後には、登壇者の4人から今回の座談会を通して感じたこと、伝えたいことをメッセージとして発表してもらいました

 田崎さんは、『つくる時からゴミを考える』。日本でも90年代から「拡大生産者責任」の話は進んでいますが、商品によって対応が異なったりとまだ十分ではない部分もたくさんあるそう。さらなる徹底を目指していけたらと、このメッセージを選びました。

 続いて、山下さんのメッセージは『価値』。ごみになりそうなモノも、だれかにとっては価値がある可能性があるとし、例えばメルカリなどを利用して、いらないものをリユースするような体験をしてもらえたらと話しました。

 大塚さんが選んだ言葉は『想像と創造』です。見えにくい“ごみの行方”を、いかに自分たちの暮らしから想像し、見ようとするかが大切と話し、またその先を創造することはわくわく感にもつながり楽しくごみ問題に取り組めるのでは、とまとめました。

 最後に滝沢さんからは、『ひと手間』というメッセージが。ひと手間をかけるだけでごみの量はぐっと減る、捨てる前に一度立ち止まって考えてほしいと提案。ごみやそれを処理する人など、その先にある見えないものに対して思いやりを持ってもらえたら、と話しました。

4人がメッセージを書いたホワイトボードを掲げている写真

メッセージは、登壇者がそれぞれホワイトボードに書いて発表しました。

 進行をつとめた江守さんも、モノには経済的な価値だけでなく、背景にあるストーリーの価値もあって、その「価値」を感じることがごみの出ない社会につながっていくように思ったと感想を話し、座談会を締めくくりました。


 ごみ・資源問題は、私たちの暮らしとも直結した問題であり、答えが見つかっていないだけに、社会を構成するさまざまな立場の方々が一緒に考え、行動していくことがとても重要です。

 今後もこうした機会を作っていくとともに、多様な情報を発信していきたいと思います。生配信でコメントやご意見をくださった視聴者のみなさまも、本当にありがとうございました!(終)


[掲載日:2022年8月22日]
取材、構成、文・前田 和(対話オフィス)

参考関連リンク

●たきざわゴミ研究所(外部リンク)
https://www.youtube.com/channel/UCyIxk4FS9xziPrnbxGQabEw

●上勝町ゼロ・ウェイストセンター(外部リンク)
https://why-kamikatsu.jp/

●株式会社メルカリ(外部リンク)
https://about.mercari.com/


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