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これまでの活動

2019年度夏の大公開
サイエンスカフェ「プラスチック、何が問題?」開催報告

はじめに

 当研究所の恒例行事「夏の大公開」(7/20)で、私たち社会対話・協働推進オフィス(以下、対話オフィス)はサイエンスカフェ「プラスチック、何が問題?」を開催しました。

サイエンスカフェのポスターの写真

サイエンスカフェのポスター

 ごみ問題を研究している資源循環・廃棄物研究センターの寺園淳副センター長田崎智宏室長が、プラスチックごみ(以下、プラごみ)問題について話題提供し、参加者のみなさんとともに、問題解決のために何ができるのか、アイデアを出し合いました。

 プラごみは近ごろ、メディアでよく取り上げられ、関心を集めています。そのせいか、会場には参加者があふれ、大盛況となりました。

当日の会場の写真

当日の会場の様子。過去最高となった参加者数(約70人)から、このテーマへの関心の高さがうかがえます。

 また、このサイエンスカフェを思いついたきっかけは、所内で出たこんな意見でした。

「プラごみ問題は、新聞やテレビに様々な情報がたくさんあり、全体像がよく分からない。どう考えればいいのだろう?」

 そこで、サイエンスカフェの話題提供は、「何が問題なのか」を出発点とし、さらに次の点に留意して準備を進めました。

【話題提供】
①プラごみの海洋汚染とは?-近年急増し生態系に影響
②どのようにリサイクルしているのか?-地元つくば市を見学
③分別・リサイクルしているのになぜ散乱するのか?

【ディスカッション】
・プラスチックをリデュース(削減)するために、私たちに何ができる?
・消費者として何ができるか?
・社会の仕組みをどう変えればいいの?

 当日の講義の内容とディスカッションの様子をご紹介します。

①プラスチックごみの海洋汚染とは?

プラごみ問題を自分事として考えよう

 田崎さんは、東京都内を流れ東京湾にいたる荒川下流の河川敷きの写真を示しました。

プラスチックごみが散らばった荒川流域の写真

 この写真にあるプラスチックごみ問題について、田崎さんは「注意すべきは、だれのせいなのかという点だ」と指摘。

 ごみを出すのは、川の下流域周辺に住む人たちだけではありません。上流の人もふくめて色々な人が関わっています。

 しかし、被害は下流、河口、海岸でしかわからない。「下流に問題を押し付けて(上流に住む人たちが)、自分事にしにくいタイプの問題だという点を知ってほしい」。

 海洋に流れ出したプラスチックは、分解し小さな破片になり、マイクロプラスチック(5㎜以下)と呼ばれています。

 田崎さんはプラスチックが小さくなる身近な例として洗濯ばさみをあげ、「洗濯ばさみは長期間使っていると、もろくなる。紫外線や空気中の酸素などにより、プラスチックの分子の鎖が切れるため」と説明しました。

マイクロプラスチックの写真

プラスチック 50年で20倍

 プラスチックのごみが海岸に多く流れ着き、砂浜を汚染しているという問題は、何年も前から指摘されてきました。なのに、この汚染問題がなぜ近年、注目を集めるようになったのでしょうか。

 今年(2019年)6月に大阪で開催されたG20サミット(主要20カ国等首脳会議)などの国際会議で取り上げられ、日本政府も「プラスチック資源循環戦略」などの対策に乗り出しています。

 それらの背景にあるのが、プラスチックの生産(使用)の急増です。

マイクロプラスチックの写真

 世界のプラスチックの生産量は年間3億5千万トン(日本は約1千万トン)。この50年間で、20倍に増加しました。

 田崎さんは「近年は新興国・発展途上国での使用量が増えている」と指摘。さらに「私も衝撃を受けた」と田崎さんがいったのが、こちらの調査結果です。

2050年には、海洋中プラスチックが魚類量よりも多くなることを示した写真

 プラスチック生産量は、2014年が3億トンなのに対して、2050年は約4倍の11億トン。そして、海洋中のプラスチックの量と魚類量は、2014年は1:5だが、2050年には同量になるというのです。

 田崎さんは「このままだと2050年以降は魚よりも多い量のプラスチックが海に存在してしまう。プラスチックは世界中で膨大な量を使っているという問題であり、このような視点で、対応をしていかなければいけない」と強調しました。

海の生態系に影響は?

 海洋に放置され、小さくくずれたマイクロプラスチックは、生態系にも影響を与えていると指摘されています。

 クジラなどの大きな海の生物がプラスチックを食べていたり、海鳥の胃のなかからマイクロプラスチックが見つかったりした報告があります。

 田崎さんはイワシからプラスチックの破片が見つかったという例を示しました。

イワシの体内からプラスチックは破片が検出された写真

 見つかった破片は、ポリエチレンやポリプロピレンというプラスチックで極めて小さく、田崎さんは「日本人は、イワシを丸ごと食べる食習慣がある。それだけに、深刻な問題になっているといえる」と指摘しました。

 海の生態系に対する影響はどうでしょうか。

 田崎さんによると、海洋に流れ出たプラスチック、そしてマイクロプラスチックに化学物質が吸着し、海の生き物はプラスチックを食べることで、プラスチックごと化学物質も体内に入れていることになるといいます。

 「小さな生き物が大きな生き物に食べられる(食物連鎖の)過程で、有害な化学物質が濃縮していく(生物濃縮)ことも懸念されている。ただ、どのくらい濃縮しているのか、どのような被害・リスクとなるのか、まだわかっていないことが多く、研究課題だ」と話しました。

 プラごみの何が問題かのまとめとして、田崎さんは次のように述べました。

 「プラスチックの生産(使用)量の爆発的な増加によって、海洋、海岸、河川、川岸に散乱する量が膨大になり、その結果、景観だけでなく生態系、生物への悪影響をおよぼしている。

 ただし、プラごみに伴う化学物質の毒性や食物連鎖、人への影響はまだ不明な点が多く、研究・調査の課題。

 そもそも自然物でないものが、環境中や生物中に散乱・存在していること自体も問題視されている。不明な点があるからといって、対策を遅らせるわけにはいかないだろう」。

田崎さんの写真

資源循環・廃棄物研究センターの田崎室長

②どのようにリサイクルしているのか?

 大きな問題となり、注目を集めるプラスチックごみ

 家庭で使い終わったプラスチックはどのように処理されているのでしょうか。寺園さんが、プラスチックのリサイクルについて、当研究所のあるつくば市の例をもとに解説しました。

 まず、どのようなプラスチックのごみがあるのかを整理しました。

プラスチックごみの種類を説明したスライドの写真

 家庭ごみ(家庭系廃棄物)でのプラスチックは、ペットボトル、洗剤の容器やカップ麺の器などプラスチック製容器包装、そして、プラスチック製品(バケツやCDなど)があります。

 これらのうち、ペットボトル、プラスチック製容器包装などが『容器包装』と分類されます。

 環境省などの調査で、家庭ごみでは、『容器包装』が容積で約6割を占め、その大半がプラスチック(残りが紙、金属、ガラス)です。

家庭ごみに多い容器包装についてまとめたスライドの写真

 家庭ごみのなかで、大きな割合を占める容器包装をどうするか。その処理の仕組みを取り決めたのが容器包装リサイクル法(1997年施行)です。

 「ごみの処理責任は市町村にあるが、容器包装はあまりにも量が多いので、リサイクル業者に引き取ってもらいましょうというのが容器包装リサイクル法」と寺園さん。

 この法律では、『消費者(家庭)=分別排出』、『市町村=分別収集』、『容器メーカーと中身メーカー=再商品化』と役割分担を設けました。

容器包装リサイクル法について説明しているスライドの写真

図はPETボトルの例ですが、プラスチック製容器包装の場合は『PETボトルメーカー=容器メーカー』、『飲料メーカー=中身メーカー』と考えてください。

 そして、そのリサイクルにかかる経費を、容器メーカーと飲料メーカーから集める仕組みになっています。

 メーカーからの拠出金を日本容器包装リサイクル協会に一回集め、そこから入札して、リサイクル業者に払います。「メーカー側の役割まで決めた画期的な法律」と、寺園さんは話します。

 容器包装リサイクル法による処理が始まったのは、ペットボトルが1997年4月、プラスチック製容器包装は2000年4月です。

 実際の処理・運用は市町村の判断に任されたので、全国一斉に実施されているわけではありませんが、それでも、自治体における分別収集・実施率は2013年度でペットボトルが97.7%、プラスチック製容器包装は75.3%と、全国で根付いているといえます。

 つくば市は、プラスチック製容器包装の分別収集を今年4月に開始。この機会に、寺園さんはリサイクルセンターを見学しました。

 このリサイクルセンターでは、これまで、ペットボトル、缶、びんなどの資源ごみを扱ってきていて、この4月からプラスチック製容器包装が加わったことになります。

リサイクルセンターでの流れをまとめたスライドの写真

 収集されたごみは、圧縮・梱包された後、リサイクル業者に引き取られます。

 ここでポイントになるのが、異物除去。プラスチック製容器包装にまじっている、金属製の部分や紙製の部分は取り除かなければなりません。これらの異物が多いと、業者が引き取ってくれないからです。

 業者に引き渡された後、どのようにリサイクルされるのでしょうか。

 つくば市の場合は、プラスチック製容器包装は、ガス化炉で蒸し焼きにされて合成ガスになり、最終的にアンモニア、ドライアイス、液化炭酸ガスとなって出荷されています。

 またペットボトルは、クリアファイル、卵パックやイチゴパックなどになり、身近なところに登場しているとのこと。

 化学的に処理され、合成ガスなどになる場合は『ケミカルリサイクル』、古いプラスチックが材料となり、新しい製品を生み出す場合は『材料リサイクル』とそれぞれよばれています。

 どうリサイクルされるのかは、自治体ごとにさまざまな例があり、毎年度の入札の結果で変わります。

 寺園さんが紹介した千葉県柏市では、今年度は、ペットボトルは材料リサイクルで再び飲料ボトルになったり、プラスチック製容器包装は土木建築用資材、パレットなどになったりしている場合もあるとのことです。

 寺園さんは、「それぞれの市町村でどのようなリサイクル製品ができているかは調べることができる」と、日本容器包装リサイクル協会のホームページを紹介。(※注1)

 「みなさんそれぞれの地元のリサイクルに関心を持ってほしい」と話題提供をしめくくりました。

※注1 日本容器包装リサイクル協会のホームページはこちら(外部リンク)。各市町村の容器包装の行方を調べることができます。

寺園さんの写真

資源循環・廃棄物研究センターの寺園副センター長

③分別・リサイクルしているのになぜ散乱するのか?

 リサイクルの現状についての報告の後、田崎さんが「分別収集をし、リサイクルもしている。なのになぜ、散乱しているのかと疑問に思われるかもしれない。

 実は、プラスチック問題は、ほんのわずかな割合の環境への流出でも、大問題になってしまう。そういう構造であることを知ってほしい」と強調しました。

 日本のプラスチックごみの排出は年間約900万トンで、「1%流出したら9万トン」と田崎さん。国の『海洋プラスチックごみ対策プラン』の資料だと、推定量は2~6万トンになっています。

 「日本の場合、流出は全体の1%以下、0.5%程度。それでも散乱は大きな問題になっている。散乱問題をおこさないためには、ごみは100%近く回収しなければならない問題だ」。

 一方で、海岸からのクリーンアップ(ごみ集め、ごみひろい)量は数千トンレベル。現在の何倍もクリーンアップしなければ、プラスチックごみは海洋中にどんどん増えていくことになります。

 田崎さんは「つまり、プラごみは100%に近い回収が求められる。ある程度の回収、リサイクルで『やったつもり』になってはこの問題は解決しない。問題の背後には大量生産・大量消費・大量廃棄という我々の社会の構造があることを忘れてはいけない。」と指摘しました。

 そして、当研究所と縁のある環境漫画家・ハイムーン氏の作品(※注2)を紹介しました。

イラストの写真

ハイムーン氏による、一コマ環境漫画

 元栓から大量のごみを出しているのに、それをひろってリサイクルするよりも「元栓を閉めた方が早道だ」という指摘。「もともと使う量を減らそう」というメッセージです。

 法律におけるごみ対策の優先順位は、原則として、まずリデュース(発生抑制)、次にリユース(再使用)、リサイクルそしてエネルギー回収(熱回収)、適正処理(埋め立てなど)という順になっています。

 田崎さんは「大量廃棄を見直すこと、つまり、ごみそのものを減らす、リデュース(削減)が一番肝心だ」と強調しました。

※注2 当研究所で行われた、環境漫画家ハイムーン(高月紘)さんのセミナーの様子はこちらでご覧いただけます。

参加者とディスカッション

 プラごみ問題の背景には、「大量消費・大量廃棄の構造があるのではないか」との指摘がありました。

 そこで、ディスカッションでは、どうしたらプラごみをリデュース(削減)できるかを軸に、様々な考え、アイデアを参加者が出し合いました。

ペットボトルは一度流出すると長期間、漂い続ける。そうであれば、ペットボトルを使わない工夫はできないか?例えば、水筒を入れたら飲み物が出てくるような自動販売機など、そのようなイノベーションが必要ではないか。

田崎さん:ちょうど、NPO団体が『水Do!』(※注3)という活動を始めています。マイボトル持参の際、飲料を追加できるという仕組みです。

 このような取り組みを広げていければよいのではないかと考えます。

寺園さん:ペットボトルは問題があるのではないかという意見は同感です。

 かつては、ペットボトル業界の自主規制で1リットル以上のものしか使われていませんでした。しかし、海外から小型のものが入ってきて、1リットル以下も便利だからと思われるようになり、旧厚生省が使用を認めました。

 その際の条件は、業界がしっかりリサイクルするということ。それを機会に、大量リサイクル時代が始まったと考えています。

 ペットボトルの使用量は、この数年は人口減少もあっておおむね横ばいしており、大量消費の状態で高止まりしていると考えられます。

 今後、我々がどれくらいペットボトルをやめられるかが問われていると考えています。個人でできること、社会として取り組めることの両方があると思います。

 リサイクルの経緯や現状について考えを述べた、ペットボトルリサイクル推進協議会の広報誌RINGでの私のインタビュー記事(※注4)もあるので、よろしければご覧ください。

※注3 『水Do!』についてはこちら(外部リンク)
※注4 寺園さんのインタビュー記事はこちら(外部リンク)

SNSでは、結局プラスチックごみは、燃やしてしまえばいいんじゃないか、という意見も。焼却の際に発生する熱エネルギーを回収・利用する方法がサーマルリサイクルと呼ばれるが、燃やしてしまうという事に関してどう考えるか?

寺園さん:日本では、産業界もふくめてプラスチックごみはサーマルリサイクルが多いです。材料リサイクル、ケミカルリサイクルに比べて、経費が少なくて済みます。

 容器包装リサイクル法だとメーカーから資金を集めているが、産業廃棄物の場合は、ごみを出す業者が自ら処理しなければならず結構お金がかかり、なかなか実行できないという難しい問題があります。

 しかし、私自身、プラスチックのサーマルリサイクルは推したくありません。

 プラスチック製容器包装の処理について、地球温暖化につながる二酸化炭素など、環境に悪影響を及ぼすものがどれくらい出るかというのを比較する研究があります。

 それによると、サーマルリサイクルは二酸化炭素を出すし、あまり環境にはよくないのではないか、相当効率をあげなければいけないのではないか、という事が一般的に言われています。

 なので、家庭系のプラスチック製容器包装については材料リサイクル、ケミカルリサイクルを優先させる政策が実施されています。

田崎さん:現在、家庭ごみを焼却する際の焼却炉の発電効率は12~13%。効率の良い新しい施設の場合でも20%前後です。

 そういったところで「エネルギー回収」として燃やしても、材料リサイクルやケミカルリサイクルの二酸化炭素の排出削減量には勝てません。

寺園さん:海に流れ出るくらいなら、燃やした方がいいという気持ちは私も持っています。しかし、それで満足していいのでしょうか。

 燃やすのは楽だが、それは大量消費、大量廃棄を続けることになります。苦しいけどちょっとリサイクルしよう、そして、やはり減らすのが一番ではないか、と考えます。

海外では使い捨てプラスチック製品の禁止など、法律で規制されたと聞く。日本の対策は進んでいるのか?

田崎さん:EUは使い捨てプラスチック製品を禁止するか、有料化するか、どちらかのアプローチで進んでいます。

 日本は、レジ袋の有料化を実施しようとしています。環境省、経産省の双方の大臣がG20に先だって発表しました。

 それ以外のものにどれくらい広げられるかが大事です。我々、消費者がムダなものを指摘・要求し、もっとプレッシャーをかけるようなことをしていく必要があるのではないか、と思います。

リデュースがまず大事だという点を広めるには、学校での教育が大事だと思う。小学校や中学校で、これからを担う次世代の人たちに対して、どう教えているのか?

田崎さん:小学校4年生では、ごみ焼却施設を見学していて、そのなかで、リデュースを教えている学校もあります。

 ただ、環境問題もいろいろ増えてきて、教える時間が足りないということを現場の先生から聞いています。教えたい内容はあるが、十分な時間がとれないという悩みがあるという状況のようです。

寺園さん:日本のごみ処理は何回か曲がり角があり、いま、結構な大きな曲がり角かと思います。

 昔はごみがいっぱいたまり、処分場不足が深刻でした。1960~70年代には、東京でも処分場がいっぱいになって、遠方の埋め立て地にもっていくのが大変だからということで、焼却施設をたくさん作ることが大切でした。

 2000年ごろから、焼却ではなく、「もうちょっとリサイクルを」という流れが出てきました。

 いま、全体をもっと減らす必要があるのではないかという曲がり角にきています。そのきっかけが、プラスチックごみの問題です。

 「もったいない」という言葉があります。

 「こんなにレジ袋をもらってもったいない」「使わないものをこんなにもらってもったいない」という意識がどんどん広がればと思うが、個人の気持ちの問題だけで終わってしまうと、それが長続きしません。社会の仕組みも必要だと思います。

日本は包装をしすぎでは?「なんで2重に包装してるんだろう」「どうしてこんなにプラスチックを使ってあるんだろう」と思うことが多い。プラスチックと紙が混じった複雑な包装もある。消費者にとって必要ないので、ごみになるのではないか。商品を作る側、売る側がその包装を、もっと簡易化するのがいいと思う。

寺園さん:その通りです。容器包装リサイクル法を作ったときに、製品メーカー、容器メーカーがお金を払う仕組みが初めてできました。

 これは画期的なことでしたが、メーカーの出すお金が、まだ安いです。

 だから、過剰包装になるような製品を作った場合には、もっともっと大きな金額を払わなければいけないという風に変わっていったら、過剰包装は減ると思います。

街にごみ箱を増やした方がいいのではないか。昔は公園にごみ箱が置いてあったが、見かけなくなった。コンビニのごみ箱も以前は外にあったが、いまは店内にある。私は、ごみひろいのボランティアをしているが、いくらひろっても、ポイ捨てが全然減らない。自治体などが、街のごみを回収する、分別することに乗り出してはどうか?

寺園さん:ごみ箱を置くと、市町村が処理しなくてはいけなくなるので、置きたがらないという部分があるかもしれません。

 コンビニやスーパーでも、店外にごみ箱を置くと、家庭ごみが気軽に持ち込まれるので、店内に置いて、捨てにくくしています。

 だが、販売したものを捨てるところはちゃんと用意するべきだ、ということは声を大にして言った方がいいと思います。

田崎さん:コンビニのごみ箱が店の中に置かれるようになった背景には、いろんな不適当なごみを入れたりしたためなので、一部の消費者側に問題があったと思っています。

 ただ、ごみ箱の数を増やすだけでは、分別排出という世の中の大きな動きを妨げる可能性もあります。分別をきちんとしてごみ箱に入れるということ、そこを徹底することが大切だと思います。


 この他にも、「消費者として何ができるのかなと思ったときに、一番大切なのは、ワンウェイ(使い捨て)のものを少なくすることかと思う。我々はもう少し選別をして、使うべきところは使う、使わなくていいところ、瞬間的に使って後はごみになるようなところは減らすというように意識を変えるところからスタートするといい。」といった意見もいただきました。

 また、参加者のみなさんに実施したアンケートでも、プラごみ問題にどう取り組めばいいかについて、さまざまな意見を書いていただきました。

・コンビニのアイスコーヒーも容器持参で5回に1回無料みたいな制度を設けてもよいのではないか。

・メーカーにこそ回収義務の法律を作りたい。

・過剰包装に慣れてしまっているので、意識改革が難しい。業者側がまずかわるべき。

・ゴミ分別を機械化したら効率が上がるのでは。

・ゴミ分別についての良いイメージを作るとよい(サッカー試合終了後のゴミひろいなど)。

・分別方法が細かすぎて、対応できない人がたくさんいる。何とかしてほしい問題だと思う。

 アンケートには、「自販機でのペットボトルの販売を禁止するのも、一つの方法だ」との提案があり、これについて、所内スタッフから次の意見がでました。

 「ビンや缶に比べてペットボトルは軽いので輸送効率(同じ量の液体を運ぶ際に使うエネルギー、排出するCO2)を抑制できると理解していた。ペットボトルをやめる場合、輸送効率が悪くなる問題を議論する必要があるのではないか」

 この点について、寺園さんは「指摘はその通りで、輸送効率の点は考慮すべきだと思う」としながらも、「一方で、消費量の多いペットボトルをあえて自販機から減らすような取り組みはリデュース策として面白い」とし、販売禁止策に注目しました。

 また、「ここ数年、ボトルtoボトルの取り組み(使い終わったボトルから、再生ボトルを作る取り組み)が進んでいて、技術向上、制度のフォロー、消費者の受容性向上など、さまざまな観点から考えたい」とも。

 大量消費のシンボルともいえるペットボトルをめぐって、これからも議論を深めることの重要さを強調しました。(終)

イラストの写真

参加者の皆さんの熱心な姿勢が印象的なサイエンスカフェとなりました。

[掲載日:2019年9月11日]
取材、構成、文・冨永伸夫(対話オフィス)
写真・山田晋也(地球環境研究センター 交流推進係)

参考関連リンク

●日本容器包装リサイクル協会「わたしのまちのリサイクル~分けた資源はどうなるの?~」(外部リンク)
https://www.jcpra.or.jp/Portals/0/resource/special/mytown/index.php

●対話オフィス「2019年度所内セミナー報告『環境問題をどう伝えるか?漫画を使った市民との対話』」
https://taiwa.nies.go.jp/activity/seminar2019.html

●「水Do!ネットワーク」(外部リンク)
http://sui-do.jp/

●PETボトルリサイクル推進協議会「広報誌 RING」(外部リンク)
http://www.petbottle-rec.gr.jp/ring/vol37/p01.html

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