ペットボトルの素朴な疑問を解説!
「キャップのリングははずさなくてもいいの?」
はじめに
「ペットボトルを捨てるとき、キャップははずすのに、キャップの下にあるリングはなぜはずさなくていいの?」、こんな質問をいただきました。
毎日、お世話になっているペットボトル。きちんとリサイクルしたいものですが、捨てるときのルールがいろいろあって、悩むときもあります。
資源循環・廃棄物研究センターの寺園淳副センター長に話を聞き、対話オフィスが論点を整理しました。
リングは再生工場で処理するため、はずなさくてもかまいません。
キャップの下にあるリングは、取りはずしが困難な場合が多いのが現実です。
そこで、「通常の作業でははずせない中栓、リング、取っ手などにつきましては、(中略)事業者(再生工場)がリサイクルの過程で処理することとなっている」ため、廃棄する時点では、取りはずす必要がありません。(※注1)
再生工場では、ペットボトルはリングごと粉砕機で粉々にされます。そして水の中を通って洗浄されるのですが、その際、粉砕されたリングとペットボトルが分かれるのです。
リングの素材であるPP(ポリプロピレン)は、ペットボトルの素材であるPET樹脂よりも軽いので、リングは浮き、ペットボトルは沈むため分離し、それぞれを回収します。
※注1 PETボトルリサイクル推進協議会の「ペットボトルQ&A」より。詳細はこちら(外部リンク)
異物が混じっていては、再商品化ができません
しかし、ペットボトルのリサイクル(容器包装リサイクル法では再商品化と呼びます)を考えると、リングも本来ははずした方が望ましいです。詳しく説明しましょう。
ペットボトルのリサイクルでは破砕・洗浄などの作業を経て、繊維やシート、あるいは新たにペットボトルなどに加工し直し、製品として販売・活用しています。(※注2)
廃棄されたペットボトルを加工し直す、つまり、新たな製品の原料にする際、その原料には異物が含まれていない必要があります。異物混入は避けることが原則です。
ペットボトルは、ボトル本体がPET樹脂(ポリエチレンテレフタレート)、キャップがPP(ポリプロプレンなど)、ラベルがPS(ポリスチレンなど)と様々な素材で出来上がっています。
ですので、ペットボトルをそのまま廃棄し、リサイクルしようとすると、様々な素材が混ざってしまいます。
そこで、廃棄の際には、ボトルからキャップ、ラベルをはずしPET樹脂のみにすることが望ましいです。
※注2 日本容器包装リサイクル協会の「再商品化製品販売実績」より。詳細はこちら(外部リンク)
ほんとはリングもはずしてほしいが・・・
リサイクルの観点からは、リングも取りはずすことが望まれますが、(特別の器具が必要など)取りはずしが非常に難しいリングなどの場合に限り、例外として再生工場での作業に任せているわけです。
もし、リングなどの取りはずしまで求めると、「そこまではできない」「リサイクルは面倒すぎる」等の抵抗感が生まれ、(捨てる際に、異なる素材を分けてから捨てるという)リサイクルへの協力が得にくくなる心配があります。
廃棄する際の仕分け作業は、過大な負担が伴わない範囲とすることで、リサイクルへの協力を促すというねらいがあります。
キャップまで混じると、異物が多くなってリサイクルにはよくありません。
キャップも取り除かずにいっしょに廃棄されてしまうと、異物が多くなってリサイクルにはよくありません。つまり、キャップとラベルを再生工場で取り除くための作業には、手間と経費がかかることになります。
このため、再生工場での異物取り除き作業は、最小限(取りはずし困難なリング程度)にとどめるのが望ましいです。
再生工場での取り除き作業は、最小限に
ペットボトルを収集した自治体(市町村)から再生工場へ引き渡す(売却する)場合、再生工場ではきれいなペットボトルのみの方が好まれます。
そもそも容器包装リサイクル法に則って再生工場に引取ってもらうためには、環境省の分別基準(※注3)を守っている必要があります。
この基準ではキャップの除去など様々な要件を満たすよう求めています(PETボトル「分別基準」7項目)。
※注3 日本容器包装リサイクル協会のPETボトルの「分別基準」より。詳細はこちら(外部リンク)より。
異物少ないほど高得点、きれいなほど高く売れるしくみ
ただ、要件を完全に満たせるわけではないので、どの程度満たしているかによってランク付けをしています。分別基準を守っているかどうかのチェック項目を設けます。
例えば、引き渡すペットボトル全体のなかで「キャップが残っているのは何パーセントか」「ラベルは何パーセントか」などです。(※注4)
そして、チェック項目ごとに、A(100~75点)、B(75~50点)、C(50~15点)とランク付けして採点します。そして、ランクが高い(点数が高い)方が高く買ってもらえる仕組みです。(※注5)(※注6)
当たり前ですが、汚れがなく、キャップもラベルもないペット本体だけの方が高く買ってもらえます。
中身を洗ってキャップやラベルを取ることは、高く買い取ってもらえ、自治体の収入が増えることにもなりますので、自治体財政に市民も協力してもらうということとも言えます。
キャップ、ラベルもつけたままだと、上記の点数は低くなり、有価性が低かったり(売れても安い)、残渣発生率(異物などが多すぎて再商品化できず廃棄される材料の割合)などは高まる可能性があります。
※注4 日本容器包装リサイクル協会の「市町村からの引取品質ガイドライン」より。詳細はこちら(外部リンク/PDF)
※注5 配点基準はこちら(外部リンク/PDF)
※注6 実際の実施結果はこちら(外部リンク/PDF)
しかし、分別をあきらめる自治体も
ただ、きれいなペットボトルだけ集めようとしても難しかったり、輸送効率が悪かったりするなどの理由で、割り切って混合収集する自治体もあります。
例えば札幌市などは、缶、びん、ペットボトルの混合収集のようです。
この場合は、ペットのキャップやラベルを取ってもらっていたとしても、ペットの単独収集よりはきれいではありませんし、自治体での選別施設などは必要になります。(※注7)
※注7 混合収集についての説明はこちら(外部リンク)
飲んだ人に、分別の徹底をお願いするのは難しいからです。
駅やお店の売り場に近い回収ボックスでの分別収集は、飲料メーカー(自動販売機の場合)や、お店などの事業所の責任になりますが、飲んだ人にキャップやラベルなどの分別までお願いするのは実際はなかなか困難です。
キャップ以外にも飲み残しなどで品質は落ちる
事業所が再生工場にペットボトルなどの処理委託をするにあたり、基本的には自治体で実施している再生工場と同様のリサイクル作業がされると思っていいでしょう。
ただし、回収ボックスにはキャップやラベル以外にも飲み残しや異物(ごみ)などの混入もあって、自治体での分別に比べると、資源としての品質は落ちる傾向にあると思われます。(終)
[掲載日:2018年9月3日]
取材協力:国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター 寺園 淳 副センター長
取材、構成、文・冨永伸夫(対話オフィス)
参考関連リンク
●PETボトルリサイクル推進協議会「ペットボトルQ&A」(外部リンク)
http://www.petbottle-rec.gr.jp/qanda/sec3.html#qa3_1
●日本容器包装リサイクル協会「再商品化製品販売実績」(外部リンク)
http://www.jcpra.or.jp/recycle/related_data/tabid/506/index.php
●環境省「PETボトルの分別基準」(外部リンク)
http://www.jcpra.or.jp/municipality/collection/tabid/345/index.php#link-target02
●日本容器包装リサイクル協会「市町村からの引取品質ガイドライン」(外部リンク/PDF)
http://www.jcpra.or.jp/Portals/0/resource/gather/h30/08_sashikae.pdf
●日本容器包装リサイクル協会「品質ランク区分および配点基準」(外部リンク/PDF)
http://www.jcpra.or.jp/Portals/0/resource/gather/municipal/municipal03/01/pdf/pet2018rank.pdf
●日本容器包装リサイクル協会「PETボトル品質調査結果」(外部リンク/PDF)
http://www.jcpra.or.jp/Portals/0/resource/gather/municipal/municipal03/01/pdf/29/koumokubetu29.pdf
●PETボトルリサイクル推進協議会「資源ごみ収集・単品収集と混合収集」(外部リンク)
http://www.petbottle-rec.gr.jp/more/sort.html
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