対話オフィス特別企画
座談会「今、“対話”をどう考える?対話の現在地を探る」
はじめに
社会対話・協働推進オフィス(以下、対話オフィス)は、“対話の現在地”について話し合う座談会を2024年2月29日に実施しました。
当日の座談会の様子
社会的な課題の解決に向けた取組のひとつとして、社会対話の実施や重要性を考える機会が増えている今。“対話の現在地”は、どこにあるのか?これまでの活動、経験から得た考えなどを共有し、意見交換を行いました。
当日は、対話オフィスアドバイザーのひとり、枝廣淳子さんが熱海で取り組まれている活動の体験会も兼ねて現地におうかがいし、アドバイザーの上田壮一さん、田中幹人さんと、対話オフィスから11名のメンバーが参加しました。
座談会の様子をご紹介します。
参加した対話オフィスメンバー ※2024年2月当時。
江守正多、岩崎茜、久保田泉、神志那ゆり、佐野和美、白井知子、林岳彦、前田和、松橋啓介、宮﨑紗矢香、渡邉陽子
話題提供:対話が「条件」になることをどう考えるか
はじめに、オフィスメンバーの林主幹研究員が話題提供を行いました。
林さんは、昨年の福島第一原子力発電所の処理水海洋放出の問題を通じて、“対話の不在”について考えさせられたと話します。本件では、社会への理解が深まらないまま話が進んでしまったとの意見も多く、たとえば市民との対話活動等を行っているNPO法人福島ダイアログ理事長の安東量子さんは、「もっと前からステークホルダーとちゃんと話し合わないといけなかったのでは」と指摘しています(※注1)。
処理水の海洋放出については福島県の内外でセミナー+質疑応答といった会が相当数開かれたとのことですが、社会の意見とギャップを感じる部分もあり、果たして双方どちらもが「話し合った」と呼べる機会だったのか、疑問が残るところです。
※注1 農業協同組合新聞の記事は、こちら(外部リンク)
対話の重要性を考える上で、林さんは理想理論(制約がない状態でどうあるべきかの話)と、非理想理論(現実的な制約のなかでどうするべきかの話)の2つのアプローチを挙げました。
前者の理想理論については、「現実的な制約がない状態における対話の重要性の指摘は常に大切」とし、「本来どうあるべきかを見失うと、指針がなくなる。理想とするもの、目指すところ=“北極星”として、そこにたどり着けるわけじゃないかもしれないけど、北極星がなかったらどこに行っていいかわからない。そういう意味で、理想理論的な対話の重要性は絶対にある」と話します。
一方で、「対話は重要ではあるけれど、現実問題(非理想理論的な話)としては、物事を進めるための『条件』とされてしまうと厳しい局面がある」とも。
「センシティブな案件において、対話による合意、調停、納得は不可能ではない。けれども、対話は決して簡単ではない。
たとえば、安東さんのようなセンス、スキル、スピリットを合わせ持った人がいれば成立し得る。でも逆にいうとそうした希有な資質を持っていて、かつ地域での対話に時間を割ける人はそんじょそこらにはいない。また、“色が付いている”人は難しいといった問題もある」
では、こうした社会との対話が求められる場面では、多くの場合どのような対応がされているのでしょうか。
行政では、“対話”の実施をいわゆるコンサルタント会社に依頼することも多く、情報提供セミナーや著名人を招待したイベントなどが開かれがちです。多様な人の話を聞く場から挙げられた声として意見はまとめられますが、コンサル会社がその意見を行政側などに伝えているかというと、あまり伝わっていないことも多いそう。
数年でコンサル会社の人は入れ替わってしまい、また仮に依頼主である行政まで意見が届いたとしても、受け取った人も数年で替わってしまうため、聞いた意見がどこにも積み重なっていない状況で終わることも多いとのこと。
「これについては誰が悪いという以前の話で、そもそも意味のある対話を実施して、それを継続的に受け止めることが可能な体制がない。そのため、こうした状況で『対話が条件』として求められてしまうと、そこで物事がスタックして(身動きがとれなくなる状況になって)しまう。
“北極星”は必要だけど、そこに到達しない限りその先に進めないとか、そこまで行っていないのに進めるのは拙速だと言われてしまうと、それはそれで何も進まず困ってしまうことになるかもしれない」
林さんは、対話が必要ではないとは言えないけれど、条件にならない対話は単なるガス抜きではないか?そんな対話なら必要ない?といった考えも十分に理解できるとし、「落としどころとして、ベストエフォート(最善努力)みたいなところで考えていくしかない」とまとめます。
「誰と、どこまで対応したらベストエフォートと言って良いのか?対話は重要なんだけど、物事を進める条件とされてしまうとややしんどい。理想と現実のギャップという部分について、この辺りをどう考えて、どこまでやったらいいのか。どの塩梅を目指していくのがいいのか?というところを考えていきたい」
意見交換、対話経験の共有
話題提供のあとは、アドバイザー、オフィスメンバーがそれぞれ自分の体験をもとに意見、感想を述べながら意見交換を行いました。
アドバイザー3名のお話を中心に、当日の内容から一部をピックアップしてご紹介します。
政府の新型コロナウイルス対策にアドバイザーとして参加し、市民、企業、行政など多様なステークホルダーと向き合ってきた早稲田大学教授の田中さんは、対話の実践と難しさについて実例とともに話しました。
「コロナ対策では、2021年頃から尾身さんを通して何度も国民的議論を始めましょうと言ってもらったが、非常に評判が悪かった。ウィルスの詳細はわかってきており、ここからはもう科学の話ではなく社会がどうするかの選択になってくると伝えたが、SNSなど社会の反応としては『それは専門家の仕事だろう』と。
そのなかで東京都では市民対話を30回以上実施してくれたが、聞いた内容を無視はしないけど、結局最後に政治のなかに入っていくときには『貴重なお話に感謝いたします』といった受け止めになりがち。または意見を聞いてくれたとしても、上との調整、説得になってしまって難しいところがあった。
諸外国ではどうなのか。イギリスでは、そういった市民対話の声が上がったとなると、なにかリアクションしなくてはという行政側の強迫観念がすごい。してみせなきゃいけない。リアクションするところまでが、社会の作法のセットになっている。もちろん市民側に聞くと、格好だけ、聞いたふりしているだけといった声もあるが、日本にはない慣習かと思う。
日本の場合もわざと無視しているのではなく、どうしたら良いかあまりわかっていないところがあり、結果的にアーンスタインの梯子理論(※注2)のように、『とりあえずアリバイ作りのために市民の声を聞きました』という話で終わってしまっているんだろうなと思う。
あとは、キーマンという存在をどう考えるのか、作るのか。たとえば、政治に科学のエビデンスがうまく使われた場合など、そこにどういう仕組みがあったかを見るとやっぱりキーマンがいて、その人がなんとかしている。コロナの件でいえば、尾身さんなど。でも逆に、そういう人を抜きに動く仕組みはどうあるのか?改めて聞きたいと思った」
※注2 アーンスタインの梯子理論とは?
アメリカの社会学者シェリー・アーンスタインが提唱。市民によるコントロール(市民管理)を最上段に、市民参加のレベルを8段階に分けて「市民参加(住民参加)の梯子」として表現。
社会や環境問題にクリエイティブな観点からアプローチし、「SDGs for School」など環境教育にも力を入れて取り組む一般社団法人Think the Earth理事の上田さんは、コミュニケーションと絡めて自身の考えを共有しました。
「対話という言葉は、コミュニケーションのひとつのレイヤーだと思っている。コラボレーションとかディスカッション、そしてダイアログ、カンバセーション、アウェアネス(気づき)など、色んなレイヤーで僕たちはコミュニケーションをしている。でも意思決定や合意形成したりするなかで、“対話”をあまりしてこなかったとも感じていて、でも今はそこがすごく重視される。
劇作家の平田オリザさんの著書のなかで、『会話は親しい人たち同士のおしゃべり、対話は価値観が異なる人同士の意見や情報の交換で、ディベートやディスカッションともまた異なる。近代演劇では特にこの対話の言葉を重視する』というのを読んだことがある。舞台のような、みんなが見ている場の設定は普段なかなかないはずだから、あえてそういう場を作りコミュニケーションをすることで、今までと違う答えが見つかったり関係性が生まれたりするんだと思う。
学校の現場を見ていても、先生が言ったことを生徒が守る時代から今はずいぶん変わってきている。たとえば『制服をどうする?』となったときに、生徒と先生がみんなで論点を出して話し合ったり。結論を出すことだけではなく、言いたいことをみんなで出してしまおうといった場が作られ、最終的にどこかで意思決定をしていく。
そういった間に入るようなコミュニケーションのレイヤーが、全体のマネージメントとしてすごく重要になってきていると感じる。教育の現場でもそう。必要か必要じゃないかの話ではなく、そうした“レイヤーのコミュニケーション”を意識してみることが大事なのではととらえている」
これまでさまざまな対話の場を設計し、企業や行政、ユース世代への支援やワークショップなどを実施する大学院大学至善館教授の枝廣淳子さん。実際の取り組みとからめて、対話と合意形成について紹介しました。
「対話というのは“目的はなにか”だと思っている。対話をすることで合意形成しようとしたり、対話をすること自体が目的ということもある。いずれにしても対話のBefore/Afterとして、対話をした人たちの考え方やメンタルモデルが変わったのか変わってないのかが大事。
ユースチームを対象としたワークショップで合意形成を取り上げるとき、“対話”は合意形成のためという目的で話している。問題には、正解のある問題、正解がない問題の2つがあると思っているが、正解がある問題はきちっと計算すればだれでも同じ正解にたどり着くが、正解のない問題の方が今はたぶん多い。
どうしたらいいかというと、質の高い解決策を作るしかない。質の高い解決策を作って、やってみて、やった結果を見て、さらに良い解決策を作るしかないと思っている。合意形成はそれと同じで、関わっている人たちがそうしようとか、それならまぁいいかと思える解決策を一緒に作っていくことが大切。
また“同意”と“合意”は違うという話もしており、“同意”はどちらかの意見になること。“合意”は最初に思っていた意見と違うものになるはずで、それぞれの意見と違うものを一緒に作るということだと説明している。説得でも妥協でも論争でもないという、これはかなりクリエイティブなことで、提案力が必要になってくる。自分の意見が絶対に正しく、相手を従わせようと思っているのであれば、合意形成ではなく説得とか別のやり方になるし、相手も同じように思っていたら決別になる。
合意形成は、対話をする前にはどこに結論があるかわかっていないことが実は大事で、いろんなものの見方をしながらやっていく必要も。その次に“社会的合意形成”というのがあるが、社会的という言葉がつくことで、不特定多数を対象に合意を作っていかないといけなくなる」
柏崎市の対話事例、対話の場をうまくまわすとは?
社会的合意形成の例として、対話オフィス室長(当時)の江守さんから柏崎市における対話の実例紹介について枝廣さんにリクエストが。
東日本大震災のあと、新潟県の柏崎市長(当時)からこれからのエネルギーのあり方や柏崎のまちづくりを街全体で考える機会を作ってほしいとの連絡があり、枝廣さんは2012年から「明日の柏崎づくり」事業(※注3)を実施。原発に対する推進派、反対派、中立派を含む8名から実行委員会を立ち上げ、多様な対話の場づくりを行いました。
最初の会議で、枝廣さんは原発について委員の意見を聞こうとしたのですが、なにを問いかけても誰もなにも答えず、まるでお通夜のような雰囲気だったと話します。あとでわかったことですが、柏崎市は人口8~9万人ほどの小さな町で、自分は原発反対だけど隣のご主人は東電の社員といったことがあり得るため、「原発については話さない」ということで町の平和を保ってきた背景があったそう。
このままではまずいと思い、枝廣さんが対話を進めるために出した次の一手はミニワークショップの提案でした。原発のことはとりあえず置いておき、「どういう柏崎になったらいいと思うか、子どもたちにどんな柏崎を残したいか」について、付せんを貼りながら委員に意見を出し合ってもらいました。
「みんなも私もびっくりしたのが、『長期的にどんな柏崎になってほしいか?』については、実は原発賛成派も反対派も同じだったということ。子どもも孫も、自信をもって帰ってこられる街にしたい。賛成派はそのために原発が必要だと言い、反対派はそのために原発があっではだめだと言っている。
このときみんなで発見したのが、目指している姿は同じで目的は同じ。でも手段が違うだけだったということ。そこから雰囲気がすこし変わり、原発の話だけだと対立するけれど、どういう柏崎をつくりたいかという話になると立ち位置が変わることに気がついた」
最終的にいろいろな話を委員会でできるようになり、市民に向けた第1回シンポジウム(※注4)を開くことになったときにも大きな変化がありました。通常こうしたシンポジウムを開催するときは、経産省や大学の先生など外から専門家を呼ぶことが多いのですが、委員の人たちから自分たちが壇上にあがると提案があったそうです。委員会でやっているような、賛成派も反対派も話ができるということを市民に見てもらおうと。
シンポジウムでは枝廣さんが中立の立場として司会をつとめ、委員はそれぞれなぜ原発に反対か、賛成かということを淡々と話しました。参加した市民はとてもびっくりしたそうで、「こういう話をしてもいいんだ」ということを実際に見て感じてもらうことにより、柏崎市の雰囲気も変わっていったそうです。
また委員会を進める上で、もうひとつだけ枝廣さんが仕組んだ仕掛けがありました。それは、委員会のあとに必ず懇親会を設けること。
「対話の場として向き合っていると、反対派、賛成派の立場を張らないといけなくなるけど、飲み会になると立場を置いて、もう少しいろんな話ができる。ある席では、賛成派と反対派の人たちが隣どうしに座っていて、彼らの会話が耳に入ってきてびっくりした。『自分は原発に賛成の意見は変わらないけど、今はなぜ君が反対しているのか理由はわかる』と話していた。
これはすごく大事なことで、原発に関しては最終的に誰の意見も変わらなかったけど、元々それが目的ではなかったし、『原発の話は置いておいて別の産業を考えよう』と話せるような変化があった。
すべてに合意形成をする必要はなく、進めていくためになにを合意すれば良いか。たとえば子どもも孫も、安心して誇りをもって帰って来られる柏崎にしたいというところだけでも合意できれば、原発以外の話がたくさんできる」
※注3 「明日の柏崎づくり」事業については、こちら(外部リンク)
※注4 「明日の柏崎づくり事業シンポジウム」の動画は、こちら(外部リンク)
柏崎市の話からは、あらためて対話の場をうまくまわす「人」の重要性について指摘もありました。
江守さんは「柏崎の話は、枝廣さんがいたからできたことの例になってしまうのか。そういうことができる人を増やしていく、学んで増やしていこうという話になるのかもしれないが」とコメント。
枝廣さんは、「柏崎は私だからできたということではなく、“場をホールドする”という言い方をよくするのだが、それができる人だったら可能だと思う。でもそれが唯一のやり方ではない。つまりは『近いところでぶつかっているものを、遠いところに視点を移す』というだけの話。みんなが安心してできるような場をつくる、雰囲気をつくる、そしてそれを囲っておく(ホールドする)。それができれば、できると思う。
ただ、そういう時のファシリテーションは自分が透明人間になったような感じになり、たぶんそれが難しいのだと思う。こっちに持っていきたいとか、よく見せたいとか、失敗したらどうしようとか。そういう気持ちが出てくるとホールドができなくなってしまうので、そこはトレーニングが必要」と、見解を述べました。
これを受けて、「枝廣さんという特定個人でないと成り立たないというほどには属人的ではないかもしれないけれど、やっぱり“場をホールド”できるスキル、センス、スピリットがそろっている人がいないと難しいという問題。
仕様書に書きさえすればコンサルがそうやってくれるかというとそうではないし、そうした前提となる条件が揃ってないのに“対話”を期待されてもなかなかうまくいかないのが悩ましい」と、林さんも意見しました。
つくば市の市民対話の事例、成功体験の重要性
次に、研究所がある茨城県つくば市と一緒に「気候市民会議」(無作為に抽出された市民が気候変動対策を話し合い、市に提言する会議)を実施したオフィスメンバーの松橋室長が、実例とともに社会対話に関する行政からの視点を紹介しました。
「つくば市の市民会議では、5,000人に案内を郵送して約11%の570人程から参加の返事があった(通常2~3%の回答に留まりがち)。そこから50人に絞り込み、環境問題に関心が高い人だけではなく、そうじゃない人も含めて参加してもらえる機会にすることができた。
政治との繋がりでいうと、こうした会の実施では、『会議で出た意見は政策に反映します』と始めに行政側と約束してもらうことが非常に重要。つくば市の市民会議では、最初は市民の意見を聞くのが怖い、それを実際にやらないといけなくなるのは困ると行政側はすごく構えていたが、でも実際には、参加者が投票してある程度合意されたものでまとめられるため、そんなに変なものは出てこない。
今回の市民会議を通して、行政が世論やミニパブリックス、サイレントマジョリティーの声を聞くことができるということに、すごく自信を深めてくれた感じがした。承諾してくれた人の割合が高かったことも担当者の自信につながったようで、これはしっかりやらねばと気持ちが改まったといった意見も聞けた。
気候変動以外のテーマでも市民会議を利用したいとつくば市では言ってくれている。利害調整型じゃなく、パブリックの意見を政策に活かすという意味では、すごく面白くできたと思う。共通善や公共善といったことを見つける場を作ることは基本的に大事だが、聞いた話をまとめてどの意見も拾わないととなると、やはりガス抜きにしかならないし、よくわからないものが出てきてしまう。
でも、みんなが共通して言っていることはこれだと上手くまとめられると、それに向かってそれぞれ役割分担をして進めばいいという流れができる。そういったやり方をコンサルなどでもできると良いなと思った」
つくば市の事例を受けて、こうしたアプローチや活動では成功体験が重要とのコメントもありました。
田中さんは、「地域の中でうまく行っている例はいくつかあり、ミニパブリックの声を聞く成功知見を得た人は、そのあといきなり許容度が上がる。日本各地の細かい事例のなかで、つくば市はおそらくやりやすいというか、やはり文化資本、リテラシーが高い集団がそろっているし、それに対する理路を尽くした合意を受け入れやすい土壌がある。モデルケースになると思う一方で、大きなサイズ、国サイズはどうやったらいいだろうか」と投げかけます。
オランダ、フィンランドなどで市民対話の成功事例はあるそうですが、フィンランドは経済や人口規模が埼玉県ほどのため、日本国全体でとなるとすごくハードルがあがると指摘。
「どうやってハードルを超えたらいいか、どうやって成功体験をやり得るのだろうか。あり得るとしたら、気候のウェーブかなと思っている。普段、“分断”を分析している立場として、気候の分野で前向きな、きれいな形でなにか成功体験を持てると、もっと水平展開できるんじゃないかと期待を持っている。そのための仕組みづくりはなんだろうと、聞きながら考えていた」
上田さんからは、成功体験が個人のアクションにも影響する事例が紹介されました。
「森朋子さん(対話オフィスメンバー)の研究で、ソーシャルアクションに参加して良い経験をした子は、その後シビックアクションに参加するなど、個人の力ではなく、みんなの力で物事を解決するという方に参加しやすくなるという話がある。逆にそれが失敗体験だと、二度とそういう場に参加しなくなるという研究結果も。対話はいろいろなところでなされるが、雑なものは失敗体験にもつながりやすい。そういったことを、どう乗り越えていくのだろうと思った」
そして自身の対話に関する失敗体験を例に挙げながら、「枝廣さんの言葉ですごくいいなと思ったのが、『質の高い解決策を出し続ける』こと。最初にそういう意思をちゃんとみんなで共有し、前提条件としてマインドセットすることがとても大事だと改めて思った。成功させるための最低限の技として、教育でもいいし、こうした場の活用などみんなで共有できると良さそう」と話しました。
また枝廣さんからは、「対話と聞くと、多くの人は『対話することで説得されてしまう』といったイメージがあり、まずそこのメンタルモデルを変えないとなかなか難しいと思う。対話は面白いとか、対話することで発見がある、成長できるといったイメージを持っている人は対話を恐れない。
そうではなく、自分の考えを守らなくちゃとか、説得されたらいやだ、自分じゃなくなってしまうと考えている人は、なかなか対話のテーブルについてくれないと思う」と、“対話”と向き合う心境への考察もありました。
おわりに
最後に、参加していたオフィスメンバーがこれまでの話から感じたこと、それぞれの対話への思いなどを共有し、座談会は終了しました。
今回のようにオフィスメンバー、アドバイザーが一堂に会し、対話をテーマに話し合う時間は初めてでしたが、各自の経験や考えの共有から改めて知見を深められる良い機会になりました。
今後の活動に向けて、これからもこうした会を実施していきたいと思います。(終)
[掲載日:2024年12月2日]
構成、文:前田 和/写真:渡邉 陽子(ともに対話オフィス)
参考関連リンク
●農業協同組合新聞「【処理水放出・緊急インタビュー】見えてきた意思決定の問題点 なぜ利害関係者を含まないのか?」(外部リンク)
https://www.jacom.or.jp/nousei/closeup/2023/230830-68998.php
●JFS「対話から生まれるまちづくりをめざして ~ これからの柏崎とエネルギーを考える取り組み」(外部リンク)
https://www.japanfs.org/ja/news/archives/news_id034922.html
●柏崎市公式チャンネル「明日の柏崎づくり事業シンポジウム」(動画/外部リンク)
https://www.youtube.com/playlist?list=PLkM-jAtnj5EueKqnbh2iWhQyEM9DpaZwg