1. ホーム>
  2. コラム一覧>
  3. 知ってる?本当の「SDGs」活用法

コラム一覧

知ってる?本当の「SDGs」活用法-押さえておきたい“4つのポイント”

はじめに

 最近、なにかとよく聞く言葉「SDGs」。これは、いったい何を意味しているのでしょうか?

 「SDGs」(Sustainable Development Goals)とは、2015年に国連サミットで採択された国際的な目標のことで、持続可能な世界を実現するための17のゴールと169のターゲット(各ゴールを目指すための細かな提案、目標)から構成されています。(※注1)

国連によるSDGsのポスター

国連による、「SDGs」のポスター。

 日本ではなかなか広まらなかったのですが、ここ1~2年で認知度があがり(2019年12月現在)、企業戦略に取り入れられたり、イベントに絡めてアピールされるなど、テレビや街中などでもこのマークや言葉を見かけることが増えてきたと思います。

 でも「SDGs」への認識が広まった一方で、その取組みが表面的な導入に終わっているところが目立ち、『このままだとグリーンウォッシュ(※注2)ならぬ、“SDGsウォッシュ”になってしまうのでは?』と、NGOや専門家などから懸念の声が上がっています。

 では、私たちは「SDGs」をどのように解釈し、どう使っていけばいいのか?当研究所の田崎智宏室長に話を聞き、対話オフィスが記事をまとめました。

 「SDGs」とは何かを踏まえながら、押さえておきたいポイントを整理していきたいと思います。

※注1 外務省の「SDGs」サイトは、こちら(外部リンク)

17のゴールの具体的な内容については、こちらも↓
・国際連合広報センター「持続可能な開発目標(SDGs)報告2019」(外部リンク)
・SDGs達成のための学生団体『50cm.』が作成した動画「What's SDGs?」(外部リンク)

※注2 グリーンウォッシュとは?
環境を配慮しているかのように装い、ごまかすこと。


目次

そもそも「SDGs」って?

 「SDGs」とは、一言でいうと“2030年に向けた世界の目標”のこと。2015年にできたのですが、その始まりは、1992年にブラジル・リオで開かれた地球サミットまでさかのぼります。

 このサミットは、地球環境の保全について話し合うため世界で初めて開催された国際会議で、地球環境問題に対応していくことが国際的に議論された会議でした。

 ここではまず、「アジェンダ21」(※注3)という、21世紀へ向けた環境と開発に関する行動計画=“やることリスト”ができました。ただ、行動計画ということもあり、目標がなく実効性に欠けるところもあったそうです。

 その後、2000年に「MDGs」という、開発途上国(以下、途上国)が抱える課題を解決するための国際社会共通の目標ができました。途上国から貧困をなくす、飢餓の撲滅など、2015年までに達成すべき8つの目標が掲げられました。

 その目標達成の期限が近づいた2012年、残された課題の解決に向けた新しい取組みを推進するため、「SDGs」を定めることが「リオ+20」と呼ばれる国連の会議で合意されました。

 つまり、地球サミットとMDGsの流れに、途上国だけでなく先進国も一緒に頑張ろうという新たな目標がプラスされ、“やることリスト”+目標という「SDGs」が、2015年に誕生したのです。

 ここでのポイントは、途上国だけでなく先進国も一緒に取組んでいくということ。

 特に、開発といった部分は途上国だけではなく、地球全体の問題でもあります。「SDGs」は、世界のすべての人が目指すべき目標として作られたのです。

※注3 「アジェンダ21」についてはこちら(外部リンク)

ポイント1、「SDGs」は、一言でいえば、“2030年に向けた世界の目標”

SDGs

 さて、「SDGs」ができるまでの歴史を振り返ったところで、次は「SDGs」という言葉に含まれる「SD」=『持続可能な開発(あるいは、発展)』という言葉を見ていきたいと思います。

 ここで大切になってくるのは、現在を生きる“今日世代”と、未来を生きる“将来世代”です。

 戦後の高度成長期における経済の発展により、私たちの生活は豊かになりましたが、その一方で、急速な発展による公害や自然破壊が深刻な問題に。いわゆる、今得られる利益を優先した、今日世代のニーズのみが満たされた状態でした。

 その流れのなかで次第に、このままではいけない!1つのこと(経済)だけを考えるのではなく、複数の問題(公害や自然破壊など)を一緒に見ていくことが必要なのでは?と考えられるように。

 世界的にも、経済と環境の関係のあるべき姿について、1970~1980年代の議論を通じて『持続可能な開発(発展)』という考えにたどり着きます。

 1987年には、国連の「環境と開発に関する世界委員会(ブルントラント委員会)」の報告書で、『将来の世代が自らのニーズを充足する能力を損なうことなく、現在の世代のニーズを満たすような発展』と定義され、その後もそのような発展を目指すための議論が進められました。

 そして、『持続可能な開発(発展)』の考えの下に、経済と環境、さらに社会をあわせた3つの調和を意識した、将来世代のニーズも考えた開発(発展)の必要性が問われるようになったのです。

 「SDGs」の『持続可能な(サステナブル)』という言葉には、そのような意味が込められています。

【『持続可能は開発(発展)』とは?】
・先進国と開発途上国の格差を考えること。
・将来世代のことを考えること。
・経済と環境の調和にプラスして、社会問題も考えること。

「SDGs」の何がすごい?

 先ほどの歴史で紹介したように、「SDGs」は先進国と途上国が一緒に目指すものとして定められ、そして世界が合意した目標です。

 でも環境問題の解決に向けて、先進国と途上国では長年、意見の相違がありました。悪い開発にブレーキをかけ、良い開発に変えていきたい先進国と、自分達はまだ豊かにっていないから開発は続けたい、その後に変えてほしい途上国。

 それぞれ立場も条件も考え方も異なる国々が、どのように同じ議論のテーブルに着いて話し合うことができたのでしょうか。

 それを可能にしたのが、先ほどの『持続可能な』という言葉でした。

 目標達成への道筋や方法は、国や人々によってもさまざまです。そこで、『持続可能な』という表現で自由に解釈できるようにすることで、それぞれが取組むことのできる“持続可能な発展”を想定できるようになりました。

 この魔法の言葉を組み込むことで、先進国は先進国なりに、途上国は途上国なりに、それぞれの持続可能な発展を目指し、両者が議論を続けることができました。

 そして1992年の地球サミットから23年もの年月をかけて、「SDGs」という具体的な世界目標に合意できるまでに至ったのです。

SDGs

 では、「SDGs」に世界のすべての国々が合意したということは、どんな意味を持つのでしょうか?

 1992年の地球サミットでは、各国が“持続可能な開発”に向けた戦略を立てることになりました。いくつかの国や地域では、取組みがどの程度進んでいるかを把握し、さらに推し進めるための指標を定めました。(※注4)

 でも解決したいことや抱えている問題は国により異なるため、選ばれる指標もそれぞれ異なり、自分たちにとって見たいものを見る、チェックするという結果になった面は否めません。

 しかし、現在は「SDGs」という具体的な17のゴールと169のターゲットができ、それにすべての国々が合意したことで、世界共通の物差し、「共通言語」ができました。

 各国の共通の認識となる「共通言語」ができたことで、これまで違う方向を向いていた国々が協力し、持続可能な社会の達成に向けて取り組める可能性が大幅に広がりました。

 つまり、「SDGs」は『力を集結させる』ために上手に使うことができるのです。

※注4 当研究所では、これらの指標を整理しています。データベースのページは、こちら


このままでいいのか、日本の「SDGs」

 そんな「SDGs」、日本ではどんな使われ方をしているのでしょうか。

 一番多く目にするのは、例えば企業などで「SDGs」のゴールに自分たちの活動を関連づけて、貢献している、つながっているとアピールする、いわゆる「SDGs」との紐付けのみが行われた使い方です。

 でも、それだけでいいのでしょうか。

 「SDGs」のゴールは、世界のすべての国々が合意できるぐらいの基礎となる問題の解決であり、言うなれば、“当たり前”のことでもあります。企業のブランディングに使えるほど、他社との差別化をアピールできるほどの強力な価値があるものではありません。

 もちろん、今まで意識していなかった問題に気づき、意識することはとても大切です。

 しかし、そこにプラスして、『では、どうしたらいいか?』と新たな取り組みを進めなければ、「SDGs」のゴールには一歩も近づきません。

 でも、現状では「SDGs」のここに関連しているという気づきで止まってしまう恐れがあると、今回話を聞いた田崎さんは懸念します。特に、後付けで“SDGsのここにちょっと関わっていました”というのは、ただのSDGsウォッシュであるとの指摘も。

 「SDGs」の目的は、あくまで、2015年の現状の取組みでは達成できないゴールの達成です。関連付けて終わるのではなく、そこからどれだけ行動に移せるかが大切なのです。

【「SDGs」の理想的な流れとは?】
①「SDGs」を知り、自分の取組みと関連づけて考える。
     ↓
②関連づけたゴールの達成のために、新たな取組みを行う。
     ↓
③その新たな取組みが社会に広まり、当たり前になる。そして次の取組みを行う。

ポイント2、「SDGs」は、新たな取組みを行ってはじめてゴールの実現に。紐付けに終わっては、“SDGsウォッシュ”!

SDGs

 では、そんな一歩踏み込んだ取組みをするために、「SDGs」はどう活用できるのでしょうか?

 「SDGs」は世界のすべての国々が合意した目標であり、共通言語です。これまでは各国がそれぞれ目標を立てて取り組んでいたとしたら、これからは世界が一丸となって、同じ目標に向かって取り組んでいけるということです。

 これは、私たちが暮らす社会においても同様です。

 1人、または1つの企業でやれることには限界があります。でも「SDGs」という共通言語があれば、ジャンルや立場に関係なく、17の目標に向かって、それぞれが得意な分野で力を合わせて一緒に取り組むことができます。

 例えば企業の場合、業種などが違っても、コラボレーションしながら一緒にゴールを目指すことで、新たな取り組みを実行することもできるのではないでしょうか。

 これは、人×人、企業×人など、どんなコラボレーションでも言えることです。複数の力が集まり社会に働きかけることができれば、世の中の仕組みやルールを変えることができる可能性も。

 小さな協働が大きな変化をもたらし、それが「SDGs」のゴール達成へと繋がっていくのです。

ポイント3、「SDGs」は、異なる人々が連携して同じ目標に向かって取り組み、協働するための共通言語!

SDGs

私たちは、どう「SDGs」に取り組める?

 では具体的に、私たちはどのように「SDGs」に取組んでいけるのでしょうか。

 「SDGs」は国同士が合意した世界の目標ですが、あくまで目標を達成させるのは私たちであり、企業や自治体、そして市民など、すべての人たちが実行主体です。

 個人単位であれば、まずは、今自分にとって何が問題なのか考えてみることから始めてみるのもいいかもしれません。

 自分の関心のある、興味のある問題に目を向け、そのためにどうしたらいいか考えて実行してみる。それが社会へ働きかけることにつながり、仕組みやルールを変える大きな力になります。

 こうした動きが、結果的に「SDGs」のゴールにつながっていくのです。まずは自分のやれる範囲で、できることから取り組んでみるのもおすすめです。

 でも注意しておきたい点もあります。「SDGs」は、国際社会が最低限解決しなければいけないリストであって、これがすべてではないということ。

 それぞれの国で起こっている問題、そして世界全体では2030年よりも先の将来に深刻になりうる問題(例えば、日本だと人口減少、高齢化など)はここに含まれていません。

 そのため、「SDGs」の目標を目指しつつ、各国が抱える問題にも取り組む必要があります。

 「SDGs」の目標期間は2030年ですが、2019年現在、実のところ、このままでは達成は難しそうです。17のゴールについて、2018年までに達成しておくべき状態を考えてみたところ、アジア太平洋地域ではそのいずれにおいても実現できていないという報告もあります。(※注5)

 「SDGs」の目標年まで、あと10年。

 対策に取組み始めてから効果がでるまでのタイムラグがあることや、最後の5年は2030年以降に何をすべきかなどを各国が考える期間だとすると、これからの5年が「SDGs」の目標達成に大きな影響を及ぼす、とても大切な期間になります。

 将来世代へと続く、持続可能な社会をつくるために私たちは何ができるのか?この記事をきっかけに改めて考えていただき、行動する機会になればと思います。(終)

※注5 報告書については、こちら(PDFのP.16-17/外部リンク)。

ポイント4、「SDGs」はこれからの5年が勝負!“気づき”からの、“行動”を。

SDGs

[掲載日:2019年12月26日]
取材協力:国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター循環型社会システム研究室 田崎智宏室長
取材、構成、文:前田 和(対話オフィス)

参考関連リンク

●外務省「SDGsとは?」(外部リンク)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html

●国際連合広報センター「持続可能な開発目標(SDGs)報告2019」(外部リンク)
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/sdgs_report/

●50cm.「What's SDGs?」(動画/外部リンク)
https://www.youtube.com/watch?v=QyDqENGI6g0

●国際連合広報センター「アジェンダ21」(外部リンク)
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/agenda21/

●国立環境研究所「国等が策定する持続可能性指標(SDI)のデータベース」
http://www.nies.go.jp/sdi-db/

●IGES「アジア太平洋SDG進捗報告書2019」(PDFのP.16-17/外部リンク)
https://iges.or.jp/jp/publication_documents/pub/policyreport/jp/7043/ESCAP+AP+SDG+Progress+Report_J.pdf#page=17


ホーム > コラム一覧