つくばScience Edge2026でワークショップ「海洋流出マイクロプラスチックについて考える」を実施しました
はじめに
生徒が取り組んだ研究をもとに、科学に関するアイデアを発表し、議論する場として毎年開かれている「つくばScience Edge」。今年は、3/27(金)-28(土)につくば国際会議場で開催されました。
国立環境研究所(以下、国環研)は、産業技術総合研究所(以下、産総研)との共同企画として、マイクロプラスチックを話題に、参加者全員で交流&対話する50分間のワークショップを28日に2回実施しました。
会場入口に展示した海洋ごみの写真
当日は、全国の高校生・中学生、保護者や教員の参加が各回40名程度あり、研究者の話題提供に耳を傾け、グループワークに取り組みました。
話題提供では、国環研の鈴木剛室長が講演を、産総研の天野敦子研究グループ長と飯塚睦研究員、国環研の宇智田奈津代高度技能専門員が調査器具や解説パネルの展示・解説などを行いました。
研究者の話題提供のあとは、各テーブル4-5人ずつの8グループに分かれて、高校生らが主役となって15分間で話し合いをし、全体への共有をするという形式で進行しました。国環研対話オフィスの渡邉陽子がグループワークのファシリテーションを担当しました。その中で、さまざまな気づきや意見がありましたので紹介します。
海洋流出マイクロプラスチックって何が問題なの?
現在さまざまな製品に使用され、私たちの暮らしを支える存在となっているプラスチック。しかしながら、製品のライフサイクルの過程で、プラスチックの環境流出が国際的な社会問題となっています。さらに、プラスチック粒子が人体からも検出されたという報告が出るなど、健康への影響が懸念されています。冒頭では研究者の鈴木さんから、マイクロプラスチックの特性や問題点、そして解決を目指した取り組みの国際動向などについて紹介しました。
鈴木剛さんによる話題提供
展示した採泥器やプランクトンネットなど
グループワーク:解決を目指すために私たちは何ができる?話してみよう!
話題提供のあと、各グループでそれぞれ自己紹介をして、15分程度のグループワークを行いました。今回は、海洋流出マイクロプラスチックの問題を「どこから(発生源)・どこへ(移動の把握)・どうなる(影響)・どうする(方策)」という4つの視点でとらえ、大事だと思った点や必要だと思う取り組み、今後の展開に期待することやできることなどを付箋に書き出しました。その後の対話の時間では、参加者らの活動に適宜研究所スタッフが加わって全員で意見を交わし、模造紙に考えを整理しました。
話し合いの様子
微細なマイクロプラスチックを観察する様子
全体へ共有:グループワークではこんな話が…
後半では、話し合った内容を全員に共有しました。各グループからは、次のような意見が出ました(以下は一例)。
~参加者の発表内容~
・川や海へ流れてしまったもの(プラスチック)にはいろんな研究が必要だと思うけど、回収の仕方を模索したり、正しい知見を得ることによって、できるだけマイクロプラスチックを増やさないようにすることが大切だ。
・政府で削減目標が掲げられている中、まだ意識向上が足りないなという話になり、まずはそういった法律の整備や制御などを進めて、人々がプラスチックの使用を避けたり、代替品となるプラスチックを使ったりするなど、政府だけでなく、社会全体がベースとなって意識を高めていくことが大事なのでは。
・減らすために対策をするためには一人一人が行動するには限度があると思ったので、一人一人の行動ではなく、例えば企業が物を販売するときに回収の値段も含めた値段で販売するのはどうか。
・理系の人が考える問題のように聞こえるが、解決に向けた取り組みなどを社会に広めるという面では、文系の人も十分活躍できると思うので、研究者全体としても社会全体としても協力して進めていくべき課題だなと考えた。
各グループの発表の様子
意見を整理した模造紙
限られた時間でのグループワークではありましたが、身近なことから社会全体で取り組むような対策までの意見が共有されました。研究所のスタッフも生徒ら参加者の考えを知ることができ、研究所に求められていることを再確認するなどの気づきを得ました。
研究の最新情報を研究者から紹介
各グループからの発表後、この問題の現状について鈴木さんから以下の点が説明されました。
・日本のプラスチックの海洋流出量の推計、およびマイクロプラスチックがそのうちの8割近くであるという推計
・微細なマイクロプラスチックがたまりやすいホットスポットの存在が示唆されている
・コイの稚魚を用いた実験で示された生物への影響(※注)
※注 環境研究総合推進費1-2502 愛媛大学沿岸環境科学研究センター 講師 仲山慶氏
話題提供のまとめとして、問題解決に向けては、プラスチックの排出を減らすこと、実態や流出抑制の効果を“見える化”すること、ルールをつくることの3点が急務であるという話がありました。
おわりに
鈴木さんより各グループの発表への講評と、これから各方面で活躍していく生徒さんへエールが送られました。「この問題解決に向けて何が大事かは、今後皆さんの世代の意見が重要になってくると思います。まだ問題は解決していません。解決を目指す際、今日体験してもらったやり方や考え方はベースとなり、今後も活かしてもらえると思います。ルールをつくる人でもいいし、生分解性プラを作る人、われわれのように現場に出て調査する人でもいいので、この問題の解決に少しでも関わってもらえる人になってもらえるとうれしいです。」
参加した高校生からは「マイクロプラスチックの問題にはこれまでも興味をもっていたけれど、知らないことがたくさんあった」といった感想をいただきました。また、グループで話し合ったメンバーと記念写真を撮ったり、研究者らに積極的に質問をしたりする様子が見られました。終了後、企画段階からサポートいただいたつくば国際会議場の関係者からは、「この場に参加された生徒さんの個性が発揮されていて、実施側が受け取るものがある点で良いワークショップだと思いました」といったコメントもいただきました。
ご参加いただいた皆さま、当日会場でワークショップ実施にご協力いただいた皆さま、本当にありがとうございました!
[掲載日:2026年4月27日]
構成、文、写真・渡邉 陽子(対話オフィス)
イベントに参加したスタッフ
国立環境研究所 資源循環領域 持続循環先端技術研究室 鈴木剛 室長
国立環境研究所 資源循環領域 持続循環先端技術研究室 宇智田奈津代 高度技能専門員
国立環境研究所 社会対話・協働推進オフィス 渡邉陽子 高度技能専門員
産業技術総合研究所 地球化学研究グループ 天野敦子 研究グループ長
産業技術総合研究所 地球変動史研究グループ 飯塚睦 研究員
参考関連リンク
●国立環境研究所 公開シンポジウム2025「海洋流出マイクロプラスチックの汚染実態と生物影響」
https://www.nies.go.jp/event/sympo/2025/program.html
●国立環境研究所動画チャンネル「10分で要点をつかむ! 環境省 河川マイクロプラスチック調査ガイドライン」
https://www.youtube.com/watch?v=69R5b2VUPDc
●国立環境研究所動画チャンネル「初心者でもわかる!マイクロプラスチック研究?もっと細かいナノプラはどうやって測るの?」
https://www.youtube.com/watch?v=NId31MzY_H8
●つくばScience Edge
https://www.jtbbwt.com/files/user/ScienceEdge/



