4/14(金)一般公開セミナー
「IPCCの過去と未来:制度的な背景と将来への改革の展望」
国立環境研究所の気候危機対応研究イニシアティブは、東京大学未来ビジョン研究センターとの共催で、4/14(金)15時から、一般公開セミナー『IPCCの過去と未来:制度的な背景と将来への改革の展望』を東京大学伊藤国際学術研究センターにて開催します。
気候変動に関する政府間組織「IPCC」(※注1)の報告書は気候変動に関する議論の至るところで言及されますが、そもそもIPCCとはどういう組織で、これまでにどのような歴史的な変遷を辿ってきたのでしょうか?
本セミナーでは、IPCCの制度面について研究する海外の研究者2名をお招きして、日本国内のIPCC関係者らも交えながら、IPCCの過去と未来について参加者の皆さんと一緒に考えたいと思います。関心のある方は奮ってご参加ください。
※注1 「IPCC」とは?
Intergovernmental Panel on Climate Changeの略で、世界気象機関(WMO)及び国連環境計画(UNEP)により1988年に設立された政府間組織。現在195 の国と地域が参加。世界中の科学者の協力のもと、研究知見や情報を収集、整理、検討し、気候変動の最新の科学的知見を提供している。
開催概要
日時
2023年(令和5年) 4月14日(金) 15:00~18:00
場所
東京大学 伊藤国際学術研究センター 中教室(3F)+オンライン
言語
英語 ※同時通訳なし。
主催
国立環境研究所 気候危機対応研究イニシアティブ
シナリオ・イニシアティブ(気候変動研究プロジェクト間のシナリオに関する協力イニシアティブ)
共催
東京大学公共政策大学院科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」教育・研究ユニット(STIG)
東京大学気候と社会連携研究機構(UTCCS)
東京大学未来ビジョン研究センターJMIP研究ユニット
参加方法
参加費無料。要事前申込みで、現地参加は先着45名(定員になり次第受付終了)+オンライン参加のハイブリット開催。
※本セミナーは定員に達したため、受付を終了しました。
https://docs.google.com/forms/d/1fyl45qjAT2-7cYCA_TlbopkxeTQKX29T3CGZr9ZqpkQ/edit
開催趣旨
2016年から始まった「気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change, IPCC)」の第6次評価報告書(AR6)サイクルが2023年3月の統合評価報告書(SYR)の公表をもって終わりを迎える。新型コロナ感染症の世界的流行によって当初の予定から報告書の公表は大幅に遅れたものの、各作業部会(WG)の報告書は社会からの大きな関心を集め、その影響力の大きさを示した。
2023年夏には新しいIPCC議長団の選出に続いて第7次評価報告書(AR7)サイクルが始まる。海外ではすでに次のAR7に向けた新しい研究プロジェクトの立ち上げや特別報告書のテーマ提言の活動が始まっており、IPCC改革の議論も今後活発化することが予想される。
本セミナーでは、社会科学の立場から長年IPCCの研究をしてきた海外有識者2名(Mike Hulme氏とKari De Pryck氏)を招いて、IPCCの歴史的な経緯や制度的な側面について講演してもらう。2022年12月にはHulme氏とDe Pryck氏の両氏が編集者を務めた、IPCCに関する初めての社会科学の学術書籍『A Critical Assessment of the Intergovernmental Panel on Climate Change』(外部リンク/英語)がケンブリッジ大学出版局より出版されている。
本セミナーでは、両氏の他に執筆者等としてIPCCに関与した経験のある日本人関係者らを交えて、これまでのIPCCの活動の成果と課題を振り返るとともにIPCCの将来の方向性について幅広く議論することを目的とする。
気候変動分野においてIPCCの報告書は科学的に最も権威のある情報源といえる。「政策に関連するが政策を規定しない(policy-relevant but not policy-prescriptive)」という政策中立性の原則の下、国連気候変動枠組条約(United Nations Framework Convention on Climate Change, UNFCCC)の国際交渉やその他の政策決定の場に有用な科学的助言を提供することで、IPCCは国際的な科学的助言機関としての高い信頼と地位を獲得してきた。
しかし、気候変動の影響が深刻化し、早期の排出削減もなかなか進まない中、IPCCのミッション自体が問い直されつつあり、従来の政策的中立性に基づいた科学的助言から問題解決に焦点を当てた政策の方向性を示す助言へと転換すべきと訴える声も聞かれる。
実際に、国際社会がパリ協定の1.5-2℃目標達成や脱炭素社会実現に向けて大きく舵を切る中でIPCCが約5~7年のサイクルで包括的な報告書をまとめるといった旧態依然のアプローチを継続することは、科学と政策の間のギャップをさらに広げ、その政策的な有用性が問われることにもなりかねない。
脱炭素社会実現に向けたより効果的な科学的助言のあり方とは何か。国際的な科学的助言機関の成功例として広く認知されるIPCCの制度改革を議論することは、科学と政策の新たな関係性を模索する試金石となる。AR6サイクルの終点という今のタイミングは、IPCCの将来を議論するまたとない機会である。
プログラム
15:00 趣旨説明 朝山慎一郎(国立環境研究所)
第一部
15:05 基調講演(1)
講演者 :Kari De Pryck(ジュネーブ大学)
講演題目:‘The IPCC as an Authoritative Knowledge Institution. Past, Present and Future Developments’
講演者 :Mike Hulme(ケンブリッジ大学)
講演題目:‘Has the IPCC Outlived its Usefulness?’
16:25 休憩
第二部
16:30 パネルディスカッション
司会 :杉山昌広(東京大学/AR6 WG3 LA)
登壇者:Kari De Pryck(ジュネーブ大学)
Mike Hulme(ケンブリッジ大学)
田辺清人(IGES/IPCC GHGインベントリータスクフォース共同議長)
渡部雅浩(東京大学/AR6 WG1 LA)※オンライン登壇
小西雅子(WWFジャパン/昭和女子大学)
吉澤剛(東京大学)
16:55 自由討論
17:25 閉会挨拶 江守正多(国立環境研究所/東京大学)
17:30 懇談・ネットワーキング ※18:00終了予定
※プログラムは予定のため、当日の進行により時間が前後する場合がございます。
講演者略歴
マイク・ヒューム(Mike Hulme)
イギリス・ケンブリッジ大学地理学部長・教授。気候、歴史、文化が交錯する中で、気候変動に関する知識がパブリックな言説空間でどのように作られ、表象され、利用されているかを研究している。IPCCが2007年ノーベル平和賞を受賞した際には、執筆者としてのIPCCへの重要な貢献に対してノーベル委員会から個人的な賞状を授与される。2009年にケンブリッジ大学出版局から発刊された『Why We Disagree About Climate Change』をはじめ、これまでに気候変動に関する著書を10冊ほど執筆する。
カリ・デ・プリーク(Kari De Pryck)
スイス・ジュネーブ大学環境科学研究所(ISE)講師、フランス国立科学研究センター(CNRS)インターネットと社会センター研究員。国際関係論と科学技術社会論を横断しながら、国際的な環境の専門知の生産過程、特に「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」における専門家(科学者)と外交官(政策決定者)の間の交渉プロセスについて関心を持って研究をしている。現在は参与観察の手法を用いながら、IPCC第6次評価報告書(AR6)の策定過程についてのエスノグラフィー研究を行っている。また、海洋を利用した二酸化炭素除去(CDR)とジオエンジニアリングの科学と政治にも関心がある。
お問い合わせ
●セミナーの内容について:
朝山慎一郎(国立環境研究所 社会システム領域) asayama.shinichiro★nies.go.jp(★→@)
●当日のZoom対応について:
東京大学未来ビジョン研究センター sugiyama-staff★ifi.u-tokyo.ac.jp(★→@)
[掲載日:2023年3月17日]