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これまでの活動

コミュニケーター渡邉の琵琶湖分室訪問記

はじめに


 国立環境研究所では、全国のさまざまな場所で観測や調査を行っていることをご存じでしょうか?

 今回は、対話オフィス・コミュニケーターの渡邉陽子が、琵琶湖分室(滋賀県大津市)とイベントでの連携の機会があったので、ユニークだなと思った取り組みや、琵琶湖分室スタッフのお仕事についてコミュニケーターの目線で印象に残ったことを紹介します!

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滋賀県琵琶湖環境科学研究センター外観


琵琶湖分室ってこんなところ


 琵琶湖分室は地域環境保全領域と生物多様性領域の共管で、研究員11名(専任4名、兼務7名)が所属する組織です。2017年に開設されました。

 メインのオフィスは、滋賀県大津市の市街地にある滋賀県琵琶湖環境科学研究センターの建物内にあります。県の研究員の方々と同じ建物内にあり、一部の実験室は共同で利用されているとのことでした。

 研究センター横の琵琶湖の湖岸では、近年その資源量が回復してきた琵琶湖固有種のホンモロコという魚の産卵場所だとか!街との距離も近いこんな身近なところにも産卵場所があることに驚きました。

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琵琶湖分室の入り口


 また、滋賀県琵琶湖環境科学研究センターから琵琶湖対岸10kmのところに位置する、埋め立て地(矢橋帰帆島)に建てられた淡海環境プラザ内3階に、琵琶湖分室・矢橋帰帆島ベースと呼んでいる実験スペースがあります。そこに立派な実験室を構えていて、足を踏み入れるとそのなんともユニークな光景に笑いが吹き出ました!

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衝撃の銭湯式実験室(お風呂場にドラフト!)

 淡海環境プラザに入っている琵琶湖分室・矢橋帰帆島ベースは、もとは地域の方が利用できる食堂やお風呂場だったところをリニューアルしたもので、元お風呂場だった実験室では、琵琶湖や周辺河川等でサンプリングした魚の保管をしたり、試料保存を行ったりしているそうです。


地域イベントでの琵琶湖分室ブース出展


 今回は、国立環境研究所が滋賀県草津市でのイベント「草津市こども環境会議(2/1)」内で、ブース出展を行うことになり、琵琶湖分室と一緒に協力して、子どもたちを含めた市民の皆さんと環境について話し合う場に参加しました。

 当日は、霜鳥孝一主任研究員と広報などを担当する西尾好未さん(リサーチ・アドミニストレーター(以下、RA))が、国環研の展示ブースの用意をして、琵琶湖にいるスジエビなどを生きた状態で展示しました。立ち寄られた参加者らは、身近にある湖の生き物や生態系の話を熱心に聞き入っていました。

 同会場では、学校や企業、環境活動グループなどが日ごろの活動内容などを、パネルを使って紹介する展示ブースが設けられ、年齢を超えてそれぞれの取り組みを紹介し、学び合う様子が印象的でした。こういった地域に根差した活動が、身の回りの環境問題に興味を持つ子どもたちの育成につながっているのだろうと感じました。

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ブース展示での対話の様子


琵琶湖のユニークな研究と、これまでの歩み

 イベントでのブース対応を中心となってまとめてくれた、対話オフィスメンバーの一人でもある西尾さんに、琵琶湖分室やここでのお仕事について、RAの目線でお話を伺いました。


琵琶湖では、今どんな研究がアツい?

 生物多様性領域の分野では、琵琶湖や周辺河川で捕獲した魚(主にコイ・フナ・ナマズなど)に超音波発信機(ピンガー)を取り付け、その行動や生態を調査しています。

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背中にピンガーを取り付けたフナ


 琵琶湖周辺の調査地点に発信機からの信号を記録する受信機を設置しています。発信機を取り付けた魚が受信機の受信範囲内に近づくと、その魚の個体番号やその魚がいる場所の水深・水温のデータが時刻情報とともに受信機に記録されます。受信機は琵琶湖周辺に30か所以上設置しており、また放流して回収するフロート型の受信機もあります。これらから収集されたデータを解析して、琵琶湖内での個体の行動・生態を探る研究です。

 なお、琵琶湖周辺に固定して設置する受信機は、河川法上の工作物の設置などに相当するため、滋賀県へ設置の許可の申請が必要で、この申請手続きも、RAの仕事のひとつです。


~ぜひご覧ください~
「琵琶湖コイ・フナの1年を追跡せよ!固有種と食文化を救う最新科学の挑戦」
https://www.nies.go.jp/biwakobranch/


魚の標本がたくさん保管されていますが、どの様に利用されているの?

 琵琶湖分室の取り組みのひとつとして、採集した魚介類の情報をデータベース化して公開していて、各標本の画像や採集地、DNAの塩基配列などの情報を見ることができます。

 標本検索で、種名を入力すると、標本にリストが表示されます。標本番号の一つを選択すると、その個体の情報が採集地点を示すマップと共に表示されるようになっています。

 こういった情報を地域の方が見て、琵琶湖のどのエリアにどんな魚介類が生息しているのか知ることができます。また琵琶湖魚卵データベースでは魚類(主にコイ・フナ・ホンモロコ)の産卵場所の分布を見ることができ、自分たちの住んでいる地域にどんな魚が卵を産みにきているかを知る手がかりとなっています。

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生物標本データベースの検索一例


~ぜひご覧ください~

琵琶湖生物標本データベース
https://www.nies.go.jp/biwako_specimens/index.html


琵琶湖魚卵分布データベース
https://www.nies.go.jp/biwako_eggmap/index.html


 また、採集した個体の標本を作製し保管することは分類学上とても重要で、琵琶湖分室でも標本を残していくことにも取り組んでいます。このパックした標本は、あまり見かけないスタイルだと思いますが、よくある瓶詰の標本では湾曲して見づらい頭部の様子やヒレの形などを見やすくするための琵琶湖分室で工夫した展示方法です。

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ホンモロコの標本展示(パウチ式)


そんな西尾さんの分室での役割は?どんな思いで働いている?
研究者が研究に専念できるように・・・

 先ほど紹介した琵琶湖に受信機を設置するだけでも許可申請は必要で、よりよい運用のためには行政や地域の方の理解も必要です。

 研究者が研究をできるだけ計画通りスムーズに進められるように、その他の書類申請や届け出などの法務的な部分や関係者との調整、分室そのものの体制維持などはRAの役割と思って、研究員や関係者との対話を大切にしています。


琵琶湖分室の窓口役・・・

 私自身、社会人になってから20年以上滋賀県の環境分野に係る仕事をしてきたので、ありがたいことに関係者には私自身を「琵琶湖分室」の人間と思う前に個人として認識してくださっている方も少なくありません。「こんなこと琵琶湖分室と一緒にできるかな、お願いできるかな」というような声を聞かせてくださることも多いので、そういった声をどう分室の運営に繋げていくか、窓口のような存在でいることを意識しています。


人と人とをつなぐ役・・・

 実はこんなエピソードが。先ほどご紹介しました通り、琵琶湖分室は滋賀県琵琶湖環境科学研究センターや淡海環境プラザを、その他機関・団体と一緒に使わせていただいています。淡海環境プラザでは2階に淡海環境保全財団という琵琶湖の環境保全を目的とした財団が入居しているのですが、お互いどんな研究や事業をやっているのか知らないままでいたんですね。淡海環境保全財団に私の大学時代の同級生がいたこともあり、「お互いやっていることを共有しませんか?」と言って、淡海環境プラザ1階にある琵琶湖分室・矢橋帰帆島ベースの展示スペースを利用して、それぞれの研究活動や事業内容について情報交換をする機会を設けました。その会をきっかけに、淡海環境保全財団には主要事業にアドバイザとして意見を求められたり、こちらの研究データを元に事業計画を立てられたり、琵琶湖分室では今後の協働の可能性について意見を交換したりなど、両者にとって良い関係ができたんです。


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矢橋帰帆島ベースの展示スペース


~出張を終えて(渡邉)~
 琵琶湖分室には、今回初めて入る機会となりました。県の施設だったオフィスや実験室を共同で利用させていただいている様子を知り、国立環境研究所がここに分室を置くという話になってから、県の皆さんと良好な関係づくりに取り組んできた賜物であることを感じました。私が訪れている間にも、イベント会場で、分室が入っている施設で、どこででも県の研究者の方や、施設の職員さん、地域の諸団体の方々からすぐに気軽に声をかけられていた西尾さん。その様子から、地域ならではの深い信頼関係のもと、研究活動に取り組むことができているのだなと感じました。RAの仕事の中で、人と人をつなぐ役としても活躍されている西尾さんのコミュニケーション力の高さもひしひしと感じました。お話を聞かせていただいた皆さま、ありがとうございました!


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琵琶湖のワカサギ

[掲載日:2026年5月21日]
構成、文、写真・渡邉 陽子(対話オフィス)



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